2019年度活動レポート(一般公募コース)第241号
インドネシアの大学生が流星バースト通信の原理と実験運用を学ぶ
静岡大学からの報告
本プログラムでは、2019年11月6日よりインドネシアのガジャマダ大学とウダヤナ大学の工学部電気情報系の学生10名とウダヤナ大学の引率教員1名を静岡大学浜松キャンパスに招へいしました。
2016年度より静岡大学と両大学は、流星バースト通信に関する共同研究を実施しています。流星バースト通信とは、流星が地球の大気圏に突入する際に発生する電離気体柱(流星バースト)によるVHF帯電波の反射現象を利用した見通し外通信で、設備の設置や維持が簡単かつ安価で最大2000km離れた通信局間でデータ伝送を実現できるという特徴があります。招へいした両大学とのインドネシアでの共同研究では、世界で初めての低緯度地域での流星バースト通信実験を実施しています。
今回のプログラムでは流星バースト通信を学ぶために、学生らに流星バースト通信の原理と応用、流星バースト通信の要素技術、そして、本学で長年実施している本通信方式の実験設備に関する講義をしました。この講義で学生らは、流星バーストによってどのように通信を実現するかの原理と、流星バースト通信の代表的な利用例である米国農務省のSNOTELによるテレメトリシステムについて学びました。さらに、流星バースト通信の要素技術であるパケット構成や通信プロトコル、同期方式についても学習しました。流星バースト通信の要素技術には、通信工学の授業で学ぶ事柄が多く含まれていることもあり、学生らが積極的に取り組む様子が見られました。
今回の招へいでは、本学の浜松キャンパスで行われている電気電子や情報工学に関す研究についても紹介しました。その一つとして、AI技術を利用した農業に関する研究にについて紹介し、学生はAIによって農作物の量や品質が改善することを学びました。また、次世代電気モータに関する研究室を訪問し、ベアリングレスモータの原理と応用について学習しました。さらにプログラム期間中の土曜は、「テクノフェスタ」(研究室公開日)であったことから、学生らは浜松キャンパス工学部、情報学部の多くの公開研究室を見学することで、本キャンパスの様々な研究についての知見を広めました。
浜松は輸送機械をはじめとする工業都市であり、その有力企業の一つである(株)スズキのスズキ歴史館を訪問しました。静岡大学スズキ寄附講座の教員から、東南アジアでの輸送機器企業の展開や現在の研究開発の内容や将来の見通しについて講義を受け、そしてスズキ歴史館の担当者からは自動車生産の過程や浜松地域の輸送産業の歴史等について説明を受けました。インドネシアではスズキを始めとする日本製の二輪車・四輪車が極めて普及しており、日本企業のあり方に関する説明に学生らは大いに興味を持ったようでした。
招へい学生が作成したレポートには、本プログラムで有意義な時間を過ごしたことが多々書かれておりました。このような機会をいただきました「さくらサイエンスプログラム」に感謝いたします。