2019年度活動レポート(一般公募コース)第239号
HVEMとFIBを利用した超微細組織解析体験
九州大学からの報告
さくらサイエンスプログラムにより、2019年10月22日~10月28日に上海交通大学から優秀な大学院生6名と中堅気鋭な教員2名が来日し、九州大学工学部が世界をリードする高度な教育研究、特に材料科学、電子顕微鏡分野の最先端科学技術体験を行いました。
本招へいプログラムは、アジア科学技術イノベーションを担う人材を育成するため、最先端の材料科学技術に触れてもらう機会を中国理工系トップ大学の学部学生・大学院生に提供し、将来日本との懸け橋となりうる人材を育成することを目的としました。
招へい者は、HVEMとFIBを利用した超微細組織解析における最先端科学技術に関する特別講義をシリーズで受講し、超軽量高強度マグネシウム合金の疲労特性や疲労破壊機構の解明に関する国際共同研究を行いました。また、低炭素社会を実現するための水素材料先端科学研究センターやアジアで屈指の超顕微解析研究センター、3D/4D構造材料評価研究室を見学し、日本人学生との国際交流を行いました。さらに、日本を代表するグローバル大企業や福岡県内歴史文化財等を見学することによって日本の最先端製造開発技術および福岡・日本文化への関心が高まり、将来の日本留学や国際共同研究、日本就職が促進されました。
初日
到着後、プログラムの紹介および滞在中の安全教育、キャンパスツアーを行いました。講師となる教員及び見学先研究室の日本人学生サポータが一堂に集まり、ウエルカムパーティーを開催しました。
2日目
午前のセッションでは、世界最大の大型放射光施設SPring-8を活用した、金属材料の破壊を解析するための新しい金属組織の4D観察法に関する講義を行い、この研究分野に対する関心を高めたと同時にディスカッションを通じて日本人学生との交流を深めました。午後には、「高強度マグネシウム合金の疲労破壊」に関する講義を受講後、九州大学超顕微解析研究センターを見学しました。
3日目
午前は、「HVEMによる原子レベル超微細組織解析」と題してHVEMによる原子レベル超微細組織解析の原理とその応用について分かりやすく解説しました。午後には、世界に先駆けて水素材料に関する最先端基礎研究と実用研究を実施している九州大学水素材料先端科学研究センターHYDROGENIUSを見学しました。水素は究極のクリーンエネルギー媒体と言われ、人類がかかえるエネルギー問題や地球環境問題を解決するために必要不可欠と考えられています。水素を安全かつ効率的に使うためには、長いスパンで根気強くひとつひとつの課題の解決に取り組む姿勢が大事であることを若い世代に理解してもらいました。
4日目
「SEM-EBSDとFIBの操作」に関する講義を行い、HVEMによる原子レベル超微細組織解析について実演を通じて体験しました。材料の特性を決定するのは材料の原子レベル微細構造であることを理解し、ナノ材料の解析及び新しい材料の開発のため、FIBやHVEMなどナノテクノロジーの重要性について考えてもらいました。
5日目
午前は太宰府天満宮を、午後は九州国立博物館を見学しました。九州国立博物館では、新元号「令和」が太宰府に縁のある万葉集巻五の「梅花の歌三十二首」の序文から選ばれたことを記念して、太宰府の歴史・文化を国内外に向けて紹介する特別企画「令和」を楽しんでもらいました。
6日目
福岡市内の文化施設・櫛田神社を訪ね、博多駅周辺を散策しながら福岡県内歴史文化財等を見学しました。
最終日
研修発表会を行いました。招へい者は今回の研修で学んだことなどを話し合ってテーマを自由に決めてまとめ、英語で発表してもらいました。
招へい者は、本プログラムへの参加を通して、九州大学とりわけ工学部が取組んでいる最先端工学科学技術に関する研究・教育の面白さを実感することができ、本学への留学意識が一段と高まったという印象を強く受けました。
最後に、このような機会を作って頂いたさくらサイエンスプログラムに感謝申し上げます。