2019年度 活動レポート 第236号:金沢大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第236号

海洋プレートから島弧ー大陸への発達過程解明に関する国際共同研究交流

金沢大学地球惑星科学コースからの報告

2019年10月17日から11月1日、インド・フィリピンの若手研究者7名を招へいし、共同研究プログラムを実施しました。

2019年度のねらい

本研究室では、海洋プレートから島弧・大陸への形成過程の解明を目指し、海洋プレートからの直接試料採取、過去の海洋プレートや島弧深部が地表に露出した地域の野外調査および岩石試料解析を行なっています。インド・フィリピンには、過去の海洋プレートが地表に露出した場所など、貴重な研究対象が広がっていることから、これまで、現地の研究者らと、さくらサイエンスプログラムを利用した学生の派遣を継続的に進めてきました。

そこで、今年度は、海洋プレートを構成していた物質だけでなく、大陸起源の物質、これらの地質帯からなる地域が現在どのように我々の生活に関与しているか(活断層や地盤沈下など)という研究テーマも共有し、一部の試料に関しては本研究設備で分析を行うことで、海洋プレートから島弧・大陸への形成過程に関する共同研究体制の強化を行うことを目的としました。

実際の交流‐野外調査と現地討論

海洋島弧深部が海岸線に露出している福井県小浜市周辺の野外調査を行いました。しかし、野外調査は計画どおりいかないものです。天気が悪くて、観察内容を変更せざるを得ませんでした。

初日は調査予定近傍で過去7万年間の地球環境の変動記録解読に成功した若狭の水月湖の堆積物が展示してある福井県年縞博物館を見学し、様々な地質記録とそれらが地球環境に影響を与えたとるする展示物に、参加者は興奮することになりました。

天候が悪く急遽立ち寄った福井年縞博物館での展示物観察風景

翌日、天気も回復し、上部地殻相当から上部マントル相当までの岩石群が観察できました。ここでは、フィリピンから参加してくれた学生の専門分野による観察方法が新しく、我々研究グループで情報をシェアすることができました。

海洋プレートが地表に露出する地域でフィリピンからの参加者が
自分の経験を生かした観察結果を参加者に説明

また、新潟県糸魚川市のフォッサマグナミュージアムにも見学に行き、日本の石にも推奨されているヒスイを中心とした多くの岩石群の展示、島弧の代表である日本の地質と地球史を俯瞰しました。また近くのフォッサマグナマパークで、プレート境界であると解釈されている断層の見学は一同がその展示方法の秀逸さも含めて感動することになりました。

フォッサマグナパークでのプレート境界露頭での記念撮影

岩石試料の解析:本学の化学分析設備を使って主要岩石中の鉱物の主要元素組成、微量元素組成を測定し、岩石の部分溶融プロセス、温度圧力履歴、変形履歴について検討することで、海洋プレートから島弧・大陸への環境変化に対応する物質変化を検討しました。

金沢大学設置の化学分析装置を使用した化学分析
この試料を分析する目的を事前に話し合い、事後も結果について発表しました。

学生との交流

さくら参加学生は自らの研究発表を行い、学生・参加教員と議論を行いました。それだけでなく、アクティブラーニング形式の講義に参加し、学生らと英語で議論を行いました。また、金沢大学が取り組んでいるアウトリーチ活動『ふれてサイエンス』にも参加し、一般市民の見学者とも交流を行いました。

金沢大学アウトリーチ活動『ふれてサイエンス』に参加
地球科学の一般普及に貢献