2019年度活動レポート(一般公募コース)第210号
自閉症スペクトラム障害モデルショウジョウバエの開発と
治療薬候補ベトナム産植物の探索
京都工芸繊維大学からの報告
令和元年11月1日(金)〜11月21日(木)の間、ベトナム国立医用材料研究所から引率者Hang博士の他3名の若手研究者を受け入れ共同研究を実施しました。
Hang博士らと受け入れ教員である山口政光・吉田英樹らは、自閉症モデルショウジョウバエを用いてベトナム産薬用植物抽出液から治療薬候補物質を探索する共同研究をこれまでに実施してきました。
野生型と比べて自閉症モデルショウジョウバエは社会性の低下、学習能力の低下、多動性、神経・筋接合部のシナプス形態異常などの表現型を示します。社会性の低下を指標にして100種類以上のベトナム産薬用植物抽出液をスクリーニングした結果、約20種類で有望な改善効果が見られています。
今回3週間の短い期間ではありましたが、共焦点レーザー顕微鏡が整備されていないベトナム国立医用材料研究所では実施できない神経・筋接合部のシナプス形態の共焦点レーザー顕微鏡による観察を中心に共同研究を実施しました。
体長1ミリの3齢幼虫の実体顕微鏡下での解剖による神経・筋接合部の観察は高度な技術を必要としますが、本学大学院生の熱心な技術指導により短期間でこの技術をマスターし、期待通りにいくつかの薬用植物抽出液投与によりシナプス形態異常の改善が見られることがわかりました。このように共同研究については学術的に十分な成果が得られ、今後共著学術論文として発表することを計画しています。
11月8日(金)には環境衛生薬品株式会社(環薬)生活圏環境衛生研究所を訪問しました。この環薬は遺伝子導入ショウジョウバエ作製のためのマイクロインジェクション受託サービス等のショウジョウバエを用いたビジネスを実施している我が国唯一の企業です。研究所設備の見学と、ショウジョウバエを用いた有用物質効果試験や、がん治療用放射性製剤を作製する大学病院のクリーンルーム等の環境管理業務などの最先端事業についての説明を受けました。
11月16日(土)、17日(日)には世界遺産である金閣寺、清水寺、八坂神社、嵐山などを訪問し、京都の歴史や文化についても学びました。
本学大学院生・研究生とベトナム人研究者は研究室内で日常的に交流し、またHang博士は応用生物学専攻大学院生対象の授業で特別講師として研究紹介をするなど、双方のグローバル意識の向上につながる実りのある交流を実施できました。その結果3名のベトナム人若手研究者のうち2名は将来本学大学院博士後期課程への入学による再来日を希望するなど、今後の交流についても大きな展望が得られました。