2019年度活動レポート(一般公募コース)第196号
湿地の環境変遷と再生策に関する日中比較研究について
上智大学地球環境学研究科地球環境学専攻
教授 黄 光偉さんからの報告
上智大学では、中国の山東大学環境科学工程学院より、教員6名を招へいし、2019年9月21日から9月30日まで、さくらサイエンスプログラムによる水環境に関する共同研究活動を実施しました。
今回の交流では、まずは日本の公害の原点とも言える渡良瀬遊水地を対象に水質と土壌の合同調査を行いました。現地踏査とサンプル分析結果を踏まえて、今後の更なる改善策を議論しました。特に植物による重金属除去に関して、新しい技術開発、除去効果の評価方法および実験手法改良の検討を行い、新しい取り組み実施案が共同で作られました。今後、湿地環境修復のテーマで山東大学と本学の共同研究として実施する予定です。
また、多摩川上流域から中流域まで様々な河川地形と視察しました。多摩川流域の地形は、大まかにいって、西より東へ山地→ 丘陵地→ 台地の順に配列しています。多摩川本流および各支流は、この山地に深い峡谷をうがって流下しているので、視察により、河川地形の系統化に関するヒントが得られました。
また奥多摩湖畔の「水と緑のふれあい館」では、郷土の歴史・文化、東京都民の水源地である奥多摩の豊かな自然と水管理現状に関する知見を深めることが出来ました。さらに、川沿い散策により、堤防管理、水辺コミュニティの視察が出来、豊かな日本水文化の理解が深められました。
現地調査活動以外では、上智大学地球環境学研究科との交流イベントもありました。山東大学の研究における最新の取り組みと上智大学地球環境学研究科大学院生の研究発表が行われました。上智大学大学院生にとっては、山東大学の最先端研究の取り組みから刺激を受けました。また、上智大学大学院生の研究における新規性について、山東大学の教員から高い評価を受けました。
今回のさくらサイエンスプログラムに参加してくださった山東大学の教員達の専門は主に処理系で、いかに汚染物を効率的に除去できるかを研究目的としています。一方、上智大学地球環境学研究科の専門は主に防御系です。つまり、いかに汚染を防ぐかをミッションとしています。今回の交流は双方機関の研究を補うことにつながり、大変建設的な取り組みとなり、双方にとって、大変有意義な得ることが多くありました。この交流成果を活かして、今後は更なる連携方法を模索し、グローバルに活躍する環境人材育成に貢献していく予定です。
最後に本プログラムでの学術交流活動の機会をいただきました「さくらサイエンスプログラム」に対し、日中グループ一同を代表して感謝申し上げます。