2019年度 活動レポート 第195号:高知大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第195号

最先端の国際海底掘削プロジェクトにおける柱状試料(コア)解析技術を学ぶ

高知大学からの報告

高知大学海洋コア総合研究センターは、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、令和元年11月12日~21日に、韓国(4名)・中国(3名)・台湾(2名)の大学院生やポスドクを招へいし、海底から掘削された柱状試料(コア)の分析や試料保管に関する講義や技術指導を行う研修プログラム「国際コアスクール」を開催しました。

海洋コア総合研究センターエントランス前にて集合写真

日本が主な推進国の一つとなり、海底掘削船を用いた深海底調査の国際プロジェクト「国際深海科学掘削計画(IODP)」により、世界各地で深海底コア試料が採取され、気候変動、地震など地殻変動、地下生命の国際共同研究が実施されています。高知大学海洋コア総合研究センターは、国立研究開発法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC) と共同で、コア試料の研究・保管施設「高知コアセンター」を運営し、世界に3ヶ所あるコア保管拠点(アメリカ・テキサスA&M大学、ドイツ・ブレーメン大学、高知大学/JAMSTEC)の一つとして、国際標準に照らし、きめ細かなノウハウを構築してコア保管を行っています。また、最先端の海底掘削船と同一の研究設備が整備され、加えて文部科学省「地球掘削科学共同利用・共同研究拠点」のもと、コア試料を高感度・高解像度分析する様々な先端機器が設置されています。高知大学とJAMSTECは、国際プロジェクトに参画する若手研究者育成のため、毎年、国内の大学院生や学部生向けのコア解析の技術指導スクール「コアスクール」を開催していますが、今回は初めて海外の若手研究者を対象としたコアスクール開催です。

コアに含まれる鉱物観察用プレパラートの作成

本スクールでは、まず、IODPの枠組みと海底掘削船で行われるコア解析の概要について、現場経験豊富な研究者や技術スタッフが紹介しました。その後、海底から掘削されたコア(高知県沖の水深約1、000mの海底)を、招へい者自身で観察した上で、専門的な試料分析を行い、掘削船上と同様のコア解析を学ぶ研修を実施しました。

実体顕微鏡を見ながらコアに含まれる化石の拾い出し作業

専門分野の分析では、コアに含まれる化石の安定同位体分析や、コアの物理的性質の計測や磁気分析を行いました。最後に各実習で得られた結果を発表し、過去の気候変動や海洋環境の変化と地層形成の関係の議論など、SDGsの「13.気候変動に具体的な対策を」と「14.海の豊かさを守ろう」の個別目標ごとの理解に加え、目標間の相互関係を議論できたと思います。

専門分野の実習のレクチャー風景
観察結果の発表を前に、議論しながら資料準備する様子

今回の招へい者には、既にコア解析の経験を積んできた若手研究者もいましたが、先端機器を用いた専門分野の実習で、自身の研究に新たな学びが得られたようです。また、プログラム期間に、高知城や室戸世界ジオパークを見学し、地域文化や土地の成り立ちを学び、大きな刺激となったように見受けます。招へい者からは、再来日して国内向けコアスクールで技術指導を担当したい、あるいは自国の学生にコアスクールの参加を促したいなど、今後の交流につながる声が聞かれました。今回の結果を受け、より国際交流を活発化させるべく邁進したいと思いを新たにしました。