2019年度活動レポート(一般公募コース)第175号
アジア地域における感染症疫学若手研究者交流事業
聖路加国際大学、国立感染症研究所からの報告
アジア地域は多くの感染症が流行するホットゾーンですが、感染症研究者のネットワークを構築し、適切な情報共有を行うことは、各国の感染症対策に大きな効力を発揮します。また、日本は戦後の衛生状態が悪化した混乱期から、感染症を克服してきた歴史があり、その知見や経験は、発展著しいアジア地域の国々において重要な参考になると思われます。
本事業では、アジア諸国において、感染症疫学の分野で研究を行い、感染症対策に当たっている若手研究者を日本に招聘し、日本の実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program:FETP)に所属する若手研究者等とともにシンポジウム及びワークショップに参加し、双方の交流を深めることを目的として聖路加国際大学並びに国立感染症研究所が共同で2019年7月31日~8月9日の10日間実施しました。今回はタイ、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾から計9名のFETP研修生が参加しました。
1日目
聖路加国際大学病院にて、日本を含む各地域における感染症に関する課題や対策についてFETP研修生が発表しました。続いて聖路加国際病院における我が国の最先端の感染管理体制を見学しました。その後、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターの大曲貴夫センター長による特別講演が行われ、アジアにおける薬剤耐性菌と感染制御の必要性、重要性について学びました。
2日目
国立感染症研究所薬剤耐性研究センター 矢原耕史先生よりJANIS, Japan Nosocomial Infections Surveillanceを紹介して頂きました。その後、日本の感染症対策の現場として川崎地方衛生研究所を見学しました。
後半は感染研に舞台に移し、米国CDC Michael Bell先生による薬剤耐性菌における公衆衛生対応についてのセミナーを開催しました。講義では、米国での事例の紹介や解説、また演習問題を解きながら薬剤耐性菌についての公衆衛生対応について学びました。
本事業期間中、講義以外の時間においても各地域の文化の紹介や、日本のFETPによる書道の実演と歓迎会が行われるなど様々な交流が行われました。セミナー中の週末には日本科学未来館を見学し、感染症分野を含む我が国の優れた科学技術を実際に体験しました。
本事業を通して、若手研究者同士が様々な分野において意見交換やそれぞれの経験を共有しました。その交流を通じて形成されたネットワークにより、共同研究や情報共有が促進され我が国を含め参加各国、地域における感染症対策の根幹をなすことが期待されます。