2019年度活動レポート(一般公募コース)第172号
IOT分野における最先端IT技術の研修
キャセイ・トライテック株式会社からの報告
はじめに
キャセイ・トライテック株式会社は、さくらサイエンスプログラムによる支援を受け、2019年10日22日から10月31日,中国科学技術大学の大学院6名、大学生4名、及び引率教員1名を日本に招きました。
株式会社日立産機システム、ザインエレクトロニクス株式会社、国立情報学研究所、IT展示会、三菱みなとみらい技術館、東芝未来科学館を見学し、最先端技術の現場を見て、研究環境を理解し、キャセイ・トライテック株式会社での社内研修を通じて、その業務内容や通信業界の現状、課題、動向に対して理解を深めました。また、余暇の時間には歴史文化財を訪れ、日本の歴史、文化をより深く触れることができました。
活動内容
1.社内研修および企業見学
キャセイ・トライテック社での初日は学生達の母校の先輩である中原隆志社長(中国名:戴志堅)、および謝聞佺専務よりIoT(Internet of Things)の定義、歴史的な経緯、未来へのロードマップを始め、キャセイ・トライテック社のIoT関連製品やIoT応用開発案件、HTTP通信インターフェース等の説明を分かりやすく説明していただきました。質疑応答の時間では、学生達からの積極的な質問が飛び交い、学生達の専門分野と研究内容に関連した様々の質問が出され、中原社長からは熱心な回答をいただきました。
中原社長からの談話の後、技術本部の張磊さんと張啓鵬さんからの約3日間の研修の説明を受けました。研修の内容はOMRON社製 環境センサを用いて湿度、照度、気圧、騒音、空気中二酸化炭素の濃度を測定する実験です。MicroUSBポート経由で環境センサを接続し、センシングした情報(温度、湿度、照度、気圧、騒音、空気中の二酸化炭素濃度)や総揮発性有機化合物濃度などのデータをAWS等のクラウドシステムにアップロードし、ブラウザ経由にてそれらのデータを確認しました。
2日目からはコンピュータ学部の学生たちを中心に、3グループに分かれ、プログラムの実装に取りかかりました。グループ内で議論したり、張磊さんや張啓鵬さんに質問する場面も多く見られました。3日目には張磊さんと張啓鵬さんが同席し、研修の発表会が開かれました。各グループの個性や創造を活かしたパワーポイントの発表が、会場を大いに沸かせました。張磊さんは学生達の成果に高い評価をあたえ、学生たちに技術面のアドバイスをあたえました。
今回の社内研修を通して、学生たちはIoTを身近に感じることができ、システム開発に対して更に一層の興味を持つようになりました。
千葉県習志野市にある㈱日立産機システムを見学しました。日立産機システムの柳原部長より、日立グループの説明、日立産機システムの業務内容、キャセイ・トライテック社のモジュールを使用した製品の説明を受けました。説明の中で、日立産機システムは日立グループの中でも電機分野を担当し、特にモータ・空気圧縮機では日本でもトップクラスに入る会社であるとのお話しがありました。1階にある展示ショールームには日立産機システムの歴代を代表する製品が展示され、日立産機システムの強みを知ることができました。
キャセイ・トライテックの親会社であるザインエレクトロニクス㈱を見学しました。
ザインエレクトロニクスでは村上執行役員から、ザインの歴史、業務内容、今後のビジョンの説明を受けました。説明の中で、ザインエレクトロニクスはアナログとデジタル双方に通じたLSIの企画・設計・販売を行う半導体メーカーであるとのお話がありました。そして、AIや5Gの世界の革新の先駆けの核心を担うために、キャセイ・トライテックを子会社にし、AI/IoTを含めたシステムソリューションを担う独自の付加価値提供することを目標にしていることも分かりました。
主力製品である映像伝送用インターフェース“V-by-One”のデモでは、画像・映像機器において高速な伝送が可能であるとの説明がありました。
質疑応答の時間では、学生達からの積極的な質問が飛び交い、学生達の専門分野と研究内容に関連した様々の質問が出され、村上執行役員も答えに頭を悩ませる場面がありました。最後に村上執行役員から学生たちに、「ぜひ再来日し、就職の機会あればキャセイ・トライテック㈱とザインエレクトロニクス㈱を一つの候補に考えて欲しい」との期待の言葉を頂きました。
2.展示会の見学
千葉県幕張メッセーで開催された「2019秋 Japan IT Week」を見学しました。最終日でもあり、大勢のビジネスマンが会場を見学に訪れていました。本展示会は幅広い分野の企業が一堂に集まり、最新の動向や情報を発信する場です。中国科学技術大学の学生たちにとっては、最新のテクノロジーに触れる絶好の機会でした。会場には、AIを使用した様々な製品が展示され、学生たちはブーススタッフの説明を夢中で聞いていました。学生達には新しい貴重な発見が数多くありました。
3. 研究所の訪問
国立情報学研究所で研究員として勤めている谷林先生に研究所の研究方針、研究テーマ、館内を案内して頂きました。国立情報学研究所は国内外の大学や研究機関、民間企業等との連携・協力を行なっており、独創的・国際的な大学院教育にも取り組んでいるとのことで、谷林先生からは、日本に留学を希望する学生には、教授の紹介を行なっていただけるとのお話がありました。
4.技術館と科学館の見学
横浜市桜木町にある三菱重工の技術を紹介した技術館を見学しました。三菱みなとみらい技術館は1994年に設立した技術館で、館内には陸のゾーン、空のゾーン、海のゾーン、宇宙のゾーンに分かれています。この技術館は訪れた人、特に青少年たちが科学技術に触れ、科学技術へ興味を膨らませる場所です。
学生たちが一番興味をもったのは空のゾーンにある国産ジェット旅客機MRJでした。実物と同じ大きさの旅客機の操縦部分を再現したもので、機長席に座り、実際の操縦を体験することができます。そして、バーチャルツアーステーションでは、いろいろな体験ができ、楽しみながら技術を学んでいくことの大切さが実感できました。
訪れた学生達は科学技術館に展示されている多様性に満ちた様々な展示物を見学し、日本の優れた技術を深く理解することができました。
川崎にある東芝未来科学館を見学しました。東芝未来科学館は東芝グループの歴史、東芝製品一号機から現代に渡るまでの環境・エネルギー・社会インフラ・半導体・デジタルプロダクツ等の近未来の社会・生活シーンの先端技術を使い、身近に学び、体験することができる場所です。学生たちは東芝創業者の思いに共感し、東芝技術の優れたところに驚きを感じていました。
昭和30年から60年代の電化製品の代表である炊飯器、掃除機、洗濯機、冷蔵庫等は当時中国でも大変人気があり、国営デパートで外貨でしか購入することができなかったと引率の先生から教えていただきました。
日本の産業文明の発展に東芝が大きな力を果たしたことを学生たちは深く理解することができました。
5.日本文化の体験
東京都内で最古の歴史を持つ浅草寺を参拝しました。
風神像、雷神像がまつられた赤い提灯で有名な雷門をくぐり、境内に入ると平日にも関わらず多くの人で賑わっていました。中国とは異なる雰囲気の参道とお寺の様子に学生達は興味津々で、境内の様子を写真に写しました。
学生達は、手水所で手と口を清め、香炉から立ち上る線香の煙を身体に浴びた後、各自思い思いの将来の夢を託し、手を合わせてお参りしていました。
山梨県南東部にある富士北麓に位置する忍野村にある忍野八海を訪れました。天然記念物である「忍野八海」は、富士山の伏流水に水源を発する湧水池です。富士信仰の古跡霊場や富士道者のみそぎの場としての歴史や伝説があり、富士山域を背景とした景色の優れた水景を保有する「忍野八海」は、2013年6月富士山が世界文化遺産に登録された際、構成資産の一部として認定されました。「百聞は一見に如かず」その厳かで神秘的な湧水池に学生たちは大自然を満喫し、日本伝統文化に触れることができました。
まとめ
2019年10月31日さくらサイエンスプログラムの訪問団である学生達は、帰国の途に就きました。今回参加した学生達にとって、全員とも日本は初めて訪れる外国で、最初は非常に緊張していましたが、礼儀正しく、優しく接してくれる日本人に次第に打ち解けることができ、帰国する際には、全員が「また日本に来たい」、「ぜひ日本に留学したい」「ぜひ日本で就職したい」と口を揃えて感慨にふけっていました。
社内研修、企業訪問、国立情報学研究所の見学等で、日本の先端技術に触れるとともに、異国の日本において夢に向かってチャレンジしているキャセイ・トライテックの先輩とも交流することができ、学生たちは今後の夢を思い思いに描いていました。
謝辞
今回のプログラムの成功は、JSTの多大なご支援、訪問企業、訪問機関の多大なご協力、および心温まるご支援によるものです。交流プログラムに御尽力頂いた各研究機関、各企業の皆様に心から感謝致します。大変ありがとうございました。