2019年度活動レポート(一般公募コース)第152号
次世代エンジニア・研究者のための1分子・1細胞テクノロジー国際共同研究
東京理科大学からの報告
2019年8月1日~8月10日までの10日間、さくらサイエンスプログラムの支援により、アジア3か国から集まった10名の学生が、東京理科大学神楽坂キャンパスに滞在し、共同研究を中心とした交流を行いました。滞在したのはフィリピン・ミンダナオ州立大学イリガン校から3名、中国・セッコウ大学から3名、ベトナム・ハノイ工科大学等から4名、の若手研究者、大学院生、学部学生です。なお、中国からの招へい者3名は、現地の悪天候により予定していた帰国便が欠航となり、8月13日まで滞在しました。
これら3か国からの招へいは継続的なもので、昨年まででいったん3年計画の招へいが完結し、今回は新たに企画し直しました。来日するのは毎年新たな学生たちですが、昨年までの招へい者から日本側の研究内容をあらかじめ聞いてきており、研究打ち合わせや共同実験は極めてスムーズに進みました。また、日本側の大学院生たちは学部生のころから何度も受け入れを担当して慣れてきており、空港での出迎えや滞在中の生活の世話なども含め、教員がいなくても支障ないほど対応が練りあがってきました。
研究室においては、3か国を混合して3グループに分かれ、細胞培養や顕微鏡観察、スペクトル測定などの実験を行いました。日本の装置は多くの場合、制御画面が日本語表示になっているという障壁があるのですが、これにもかかわらず熱心に実験に取り組みました。過去の招へいを通じて普段の共同研究も進んでおり、ベトナムとの共同研究ではベトナム側が独自の光学セルを作製しており、これを用いた実験も行って改良点などを検討しました。
物理学科でありながらアウトドアで微生物採集を行う、という生物物理学ならではの企画では、昨年までとは採集場所を変え、新たな海岸での採集に取り組みました。採集した微生物は研究室に持ち帰り、予備培養を始めるところまでが今回のプログラムで、秋ごろからはこの試料から特定の細胞を単離して研究に使います。
受け入れ研究室での研究経験がある卒業生にご協力いただいた企画も二つ行いました。一つは、AI技術などを研究開発している、本学卒業生のベンチャー企業社長にご来学いただき、最新の研究動向に関する講義を行ってもらいました。また、本学卒業生が副住職を務める寺を訪問しました。一般的には、寺院の見学は文化交流の範疇と思われますが、科学技術の話も出てくる寺の訪問となりました。
留学説明会や交流会も開催しました。留学説明会では、各種募集の紹介に加え、競争倍率などについても独自の分析結果を伝え、また各国の得意分野について招へい者たちがプレゼンを行って、今後の共同研究の打ち合わせを行いました。今年は10月から、昨年招へいしたベトナムの学生が再来日する予定で、徐々に共同研究が深まってきており、本事業による招へいの効果が表れています。交流のきっかけを作って頂いた「さくらサイエンスプログラム」に深く感謝いたします。