2019年度活動レポート(一般公募コース)第102号
メガシティにおける建築的緑化手法の研修 Greening Tokyo
芝浦工業大学
清水 郁郎さんからの報告
芝浦工業大学建築学部では、さくらサイエンスプログラムによる助成のもとで、2019年7月30日から8月8日まで、ラオス国立大学建築学部とタイ国立ラジャマンガラ工科大学プラナコン校建築デザイン学部を招へいして、国際交流プログラム「メガシティにおける建築的緑化手法の研修 Greening Tokyo」を実施しました。
1.趣旨
都市居住で近年問題となるのが都市の高温化です。これは、我が国だけでなく、温帯モンスーン気候に属する東南アジアにおいても同様です。近年、温熱制御技術は大きく進歩し、日本では低炭素社会への移行もあり、ゼロエネルギービル、ゼロエネルギーハウスの開発が進みますが、よりパッシブな温熱制御方法として、建築や都市の緑化があります。緑化は、先進的な温熱制御技術の導入に比べて、より容易に技術移転ができ、その技術的、意匠的側面での理解を深めるのが今回のテーマです。都内各所で先進的な緑化手法や既存の高密度集住地区における緑化手法のサーヴェイを行い、それらから得た知見をもとに、芝浦工大豊洲キャンパスの大規模緑化の提案を試みることで、都市緑化、建築緑化の手法の理解を深めました。
2.参加者
芝浦工大から13名、ラオス国立大学建築学部からスタッフ1名、学生7名、タイ国立ラジャマンガラ工科大学プラナコン校からスタッフ1名、学生6名の合計15名。
3.活動内容
①緑化手法のデザイン・サーベイ
日・タイ・ラオス混成のグループ単位で都内の緑化先進事例を数多く実見し、植生の把握、植物管理の仕方、壁面緑化方法、屋上緑化方法、街路緑化方法をサーベイしました。緑化の手法は極めてシンプルながらうまく設計されており、壁面に植物を埋め込む方法、水を回す方法、水を利用して清涼感を演出する方法などを実見できました。
②深澤環境共生住宅
これは、パッシブな温熱制御手法が多数使われた環境共生公営住宅で、現在に至るまで大きな影響を建築分野に与えています。見学では、実際に集合住宅内を歩き、屋上緑化や壁面緑化、太陽光、風力エネルギーの利用などを実見しました。
③設計案の作成:共同作業によるキャンパス緑化案の提示
キャンパスを3Dで建ち上げながら、新たな緑化案を提案するという作業です。タイ、ラオスの学生のCADのスキルはレベルが高く、日本人学生にはよい刺激となりました。共通言語の英語を使いながら、どの班でも積極的に自分の意見を述べ、また、相手の意見を聞き、ディスカッションする光景がみられました。
④成果発表
最後に成果発表を行いました。批評には各大学スタッフ、オブザーバーも加わり、活発な議論が行われました。各班の提案は密度が高く、2日という作業時間を考えると、学生たちは個々の力をよく集約させ、完成度の高い提案を作成したと思います。
10日間という短い期間で、酷暑の中での屋外での実習が続きましたが、学生はよく集中し、高い創造性や適応力を示しました。互いの交流、異文化体験という意味でも実りの多い経験でした。今後も継続して同様の活動を続けたいと思います。