2019年度 活動レポート 第85号:金沢大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第085号

環境対応型新規繊維染色プロセス技術開発を担う人材の日中連携による育成

金沢大学理工研究域化学プロセス工学研究室
教授 田村 和弘さんからの報告

「さくらサイエンスプログラム」により、平成31年8月18日から8月28日まで、中国・大連工業大学で選抜された8名の招へい者(引率教員含む)と本学受入れ研究室(田村教授、多田助教、大澤技術職員)・学生の協力で、本研修を実施いたしました。国連サミットで採択されたSDGsの目標の中の一つである環境・エネルギーに関する新たな取り組みに向けて、本研修では、従来の熱水染色に替わり、廃水処理が不要で、省エネルギー型の環境対応染色法として注目されている超臨界二酸化炭素を用いた新規染色プロセス開発について、受入れ研究室と招へい者がそれぞれ特色ある最新研究成果を発表・意見交換し、協働作業を通じて若手人材の育成および研究協力と一層の研究推進を図ることを目的にしています。

実験を終えて

初日

関西国際空港に無事到着後、招へい者をお出迎えし、金沢駅着が20時頃となりましたが、夕食をとりながら歓迎会を開催し、明日からの研修に備えました。

2日目

金沢大学角間キャンパスにて、午前中はオリエンテーションおよびプログラムの説明、その後打ち合わせを行い、本研修をスタートしました。午後には、化学プロセス工学研究室の学生が、大学キャンパス施設、化学プロセス工学研究室や実験室などを見学するキャンパスツアーを行い、学生間の交流を深めました。

3-4日目

相互交流の理解を深めるため、大連工業大学8名(教員および修士課程学生)と本学化学プロセス工学研究室の4名の学生がこれまでの双方の超臨界染色プロセス技術開発に関する研究背景や進展具合を披露しました。日中合同シンポジウムの形をとりながらも家庭的な雰囲気の中で、活発な意見交換することができました。また英語での発表が初めての学生には、研究発表および討論を直接肌で感じてもらうことができる良いデビューの機会となりました。発表会の後には、学内の古民家施設「角間の里」にて、そうめん流しやBBQをして、参加者全員の親睦と交流を深めました。

合同シンポジウム発表風景

5-6日目

北陸地域の繊維産業創出機構の中心である福井県工業技術センター、そしてファッションからナノテク素材まで海外のTOPブランドにも提供している、染色を基盤にした「先端ファブリックメーカー」の小松マテーレ(株)を見学しました。眼鏡フレームの3D加工、炭素繊維や超発砲セラミックス建材などの先端材料分野まで施設見学でき、最新繊維加工技術に関して知ることができました。また、「ファスナーの世界シェア45%超」を誇るYKK(株)では、ファスナーの歴史と多様性、その製造プロセスをさらに深く学ぶ良い一日となりました。

YKKを見学しました。

7-8日目

超臨界二酸化炭素を用いた新規プロセス開発について機器の性能を最大限に活かす技術を学ぶため、本研究室所有の実験装置を用い、抽出プロセスおよびバイオディゼル油製造プロセスの実験装置を用いて、本研究室学生の指導のもと、招へい者ら自らが測定機器を用いて実験を行いました。招へい者らはこれらの装置を使用したことがないため、貴重な体験となり、新たなことを学ぶよい機会となりました。

超臨界抽出実験の様子

9日目

午前には、石川県工業試験場を視察し、最新繊維加工技術に関する施設見学をさせていただき、研究所員との情報交換をすることで、最新繊維加工技術で使われる各種織機に関して知ることができました。午後からは、加賀友禅会館にて、金沢市の伝統工芸に指定されている加賀友禅染の思い思いのデザインを手描き体験しました。できたオリジナルなハンカチは記念のお土産になりました。

加賀友禅会館にて、加賀友禅染の思い思いのデザインを手描中です。

10日目

午前中には、参加者からこの研修を通して経験したこと、成長したことなど、本研修のレポート作成と活動報告を行いました。午後には、さくらサイエンスプログラム「共同研究活動コース」の修了証授与式を行い、引き続き、参加者とこの研修に協力した学生、スタッフ全員でお別れパーティを行いました。幾つかのグループは研修活動や見学の様子を数分の動画やスライドショーにまとめたものを上映したりして、皆で一緒に過ごした研修の日々を振り返りながら楽しみました。

11日目

研修最終日、関西国際空港まで、招へい者をお見送りし、別れを惜しみつつ、再会を約束して無事帰国されました。

本事業の修了後のアンケートからも全員が今回の訪日に対して「非常に満足」いただいたことが伺え、本学大学院博士課程への留学を希望する学生もいました。今後につながる成果が得られ、とても有意義な国際交流と若手人材育成の機会をいただいたことに、心より感謝申し上げます。