2019年度 活動レポート 第62号:粒子線治療推進研究会

2019年度活動レポート(一般公募コース)第062号

中国の若手医師が重粒子線によるがん治療の最前線を学ぶ

粒子線治療推進研究会からの報告

2019年8月31日から9月3日の日程で中国から若手医師を招へいし、重粒子線によるがん治療に関する研修プログラムを実施しました。

集合写真

9月1日午前10時にQST病院待合室で国際治療研究センター柴山氏にお会いし、見学の案内をして頂く辻井副院長の待つ新治療棟へ引率して頂きました。新治療棟では患者の気持ちを和らげる為に自然光を取り入れた設計の治療前患者待合室をはじめ、治療をスピーディーに行う為に設計されたロボットアームを使った固定水平・垂直方向からの粒子線ビームを採用したD治療室及びロボットアームに加え昨年から治療が始まった世界初の超伝導ガントリーを採用したG治療室、治療計画に用いられる患者固定具作成室及びCT装置を順に案内して頂きました。G治療室では、治療台を360°方向から狙える様に設計されたビーム照射装置と、それを回転させるための巨大な(300トン)超伝導ガントリー装置を外側から見学し説明を受けました。

D治療室ロボットアームの説明
G治療室のガントリー室での説明

約1時間半の見学の後、見学者、通訳者及びスタッフでQSTの職員食堂で日本のメニューに興味を示しながらチケットを購入し、QST職員に混じって昼食を取り、昼食後タクシーでセミナー会場に向かいました。

午後1時前に会場に到着し、講師の辻井先生(QST病院副院長)及び早乙女先生(QST医学物理士)と挨拶を交わし、新たに専門知識の説明に必要と考慮した通訳者を交えて講義が始まりました。

参加者は、頭部ガンマナイフ及び全身ガンマナイフを用いてがん治療を行っている放射線治療医及びそのシステム等を開発支援する組織からだったために、放射線についての基礎的な知識はありました。

講義は英語で、英文によるパワーポイントによって行われました。はじめに、辻井先生から粒子線治療の世界的な歴史から日本での治療の歴史についての講義がありました。

辻井先生の講義風景

次に、早乙女先生が重粒子線治療の物理的な説明を、治療の為のビームを作るイオン発生装置から加速装置に加え、ビームデリバリーシステムによる粒子線のがん細胞へ当てる方法と当たった粒子線ががん細胞とその周辺細胞にどの様な影響を与えるかなど、治療に必要な各種制御装置などの具体的な図を用いて行いました。また、近々に完成されるであろうコンパクトタイプの重粒子線治療施設の構想も紹介されました。

早乙女先生の講義風景

講義の後に、質疑応答が行われ、中国からの参加者が英語で質問がうまく言えないときなどは技術的な通訳が支援を行い、活発に装置についてのディスカッションが行われました。

9月2日は午前9時から12時までの時間を使い、辻井先生による重粒子線によるがん治療の有効性に関する説明の講義及び臨床例を挙げての治療効果の説明の講義が行われました。治療効果の講義では、現在使用しているガンマナイフと重粒子線治療の比較にとどまらず、重粒子線治療についての長所及びそれを満たすための新しい技術をQSTが組織全体で進めていることに驚嘆していました。今後中国でも重粒子線治療が普及して行くことが予想されますが、その価格的な問題についても議論されました。

また、辻井先生の提案で、受講者が現在行っている治療などの紹介が有り、中国の医療状況などの意見交換が行われました。講義終了後、辻井先生から参加者に受講証明書が手渡され、中国研究者送り出し機関のかたから、今後このようなセミナーをより充実した形で継続したい旨のご意見を戴きました。