2019年度活動レポート(一般公募コース)第061号
日本の最先端膜分離技術を使ってベトナムの水環境汚染や水資源不足に挑む
長崎大学からの報告
長崎大学大学院工学研究科国際水環境工学コースは、令和元年9月15日(日)~9月21日(土)にベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学環境自然資源学部からの代表10名(教員1名、大学院生1名、学部生8名)を長崎に迎え、「日本の最先端膜分離技術を使ってベトナムの水環境汚染や水資源不足に挑む」と題した科学技術交流事業を実施しました。
ベトナム社会主義共和国では特にホーチミン市を含むメコンデルタ地域において、未処理の都市下水の放流による河川水汚染や、河川水量低下に起因した海水遡上による河川水への塩水混入により、水道水水源の水質悪化が深刻化してきています。日本が世界トップの技術力を誇る「逆浸透膜」は水中の不純物を徹底的に取り除くことが可能な水浄化技術です。そこで、本交流事業において、ベトナム南部最高位のホーチミン市工科大学の学生を招へいし、日本の最先端膜処理技術の知識と理解を深めてもらうことで、本コースへの修士課程への入学や日本企業への就職など将来の再来日や、将来母国で水道事業に携わる際に日本企業と連携してプロジェクトを進行するきっかけにすることを趣旨としました。
本事業では、膜処理技術全般を講義・実習・見学を通して知ることができるプログラム構成にしました。午前中は大学教員からの講義を実施し、午後からはその講義で学んだことを実践するために水処理試験実習を実施しました。
講義については、膜分離技術に対する学生の関心が非常に高く、講義中に多くの質問が出て講義がなかなか進まないなど嬉しい問題もありました。特に招へい者のうち4名の学生はホーチミン市工科大学ですべての単位を英語で習得するプログラムの一期生ということもあって非常に流暢な英語を使っており、議論の内容も非常に深くなりました。
佐世保市水道局山の田浄水場における見学では、特に浄水汚泥の処理やエネルギーに関する質問など膜ろ過以外の浄水プラント全体に関わる質問も多くあり、学生が広い視野を持って見学していることが分かりました。
ハウステンボスの環境ツアーでは、最終の膜ろ過だけでなく、それに至るまでの前処理に関する質問が多く、学生の水処理技術に対する知識と感心の深さも感じられました。さらに、協和機電工業株式会社の事業所訪問では、ベトナム現地法人と日本法人での採用や仕事の違いに対する質問もあり、将来日本企業への就職を考えている学生もいることが感じられました。
最後の成果発表ではすべての学生が講義・実習・見学で得た知識を一つのストーリーとしてパワーポイントを使って発表しました。英語含めて準備に時間をかけた内容であり、本プログラムが招へい者の知識と将来にとって非常に有意義なものであったと感じられました。最後に、本事業の遂行に多大なご協力いただいた関係者(佐世保市水道局、ハウステンボス、協和機電工業株式会社)の皆様に厚くお礼を申し上げます。