2018年度 活動レポート 第444号:富山大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第444号

ベトナムの天然物化学研究のさらなる向上を目指した
ベトナム若手研究者との研究交流

富山大学和漢医薬学総合研究所からの報告

「さくらサイエンスプログラム」により、平成31年3月4日から3月13日まで、ベトナム・フエ医科薬科大学から4名の大学院生と引率の教員として同大学薬学部長が来日しました。本プログラムは、受入れ研究室が所有する機器を用いて、招へい研究者らが自らの試料を精製し、機器の性能を最大限に活かす方法論を学ぶことで、ベトナムの天然物化学研究のさらなる向上を図ることを目的に実施しました。

実験打ち合わせ

富山に到着した3月5日は、研究を開始するにあたり、招へい研究者らの試料の詳細と実験手順について打ち合わせを行いました。招へい研究者らは、既に本国において植物からの化合物の粗精製を終えており、実験打ち合わせ後、直ちにシリカゲルオープンカラムを用いた化合物の精製を開始しました。この操作を3月7日まで繰り返すことにより、純度はまだ低いものの、多くの化合物を単離することができました。招へい研究者らはこの操作には既に熟練していたため、かなりのスピードで操作を行うことができました。

化合物の精製

研究開始4日目の3月5日からは、化合物をより高純度に精製するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた化合物の精製を始めました。招へい研究者らはこの装置を少しは使ったことがあったため、比較的スムースに化合物の精製を進めることができました。これを7日目の3月8日まで続けることにより、高純度に精製した化合物を6種類得ることができました。

HPLCを用いた化合物の精製

精製した化合物については、化合物の化学構造の決定において最も汎用される核磁気共鳴装置(NMR)を用いて1次元スペクトルデータを得ることができました。また、精製した化合物の紫外可視赤外分光スペクトルや赤外可視吸収スペクトル、旋光度といった各種スペクトルデータについても、招へい研究者ら自らが測定機器を用いて測定を行いました。招へい研究者らはこれらの装置を使用したことがなく、貴重な体験となりました。しかし、化学構造の決定にはより詳細な解析を必要とするため、時間が足りず、構造を完全に決定することができませんでした。研究の時間配分の見直しが、今後の課題として残されました。

また、研究開始5日目の午後には、既に精製できていた2種の化合物について、ヒトがん細胞に対する細胞毒性試験とグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対する抗菌活性試験を開始しました。本学大学院生が活性試験の手順について実演した後、招へい者らがその操作を行いました。学生たちはピペット操作が思うようにできないながらも、これらの活性試験の操作に慎重に取り組んでいました。残念ながら、今回精製した化合物に検討した活性を認めることはできなかったものの、招へい研究者らはこれまで生物活性試験の経験がなく、あらたなことを体験できたよい一日となりました。

細胞毒性試験

3月10日の日曜日は、医薬品製造メーカーである廣貫堂の資料館と和漢薬製造販売の老舗である池田屋安兵衛商店を見学しました。廣貫堂の資料館では、富山の置き薬の歴史を学ぶことができました。池田屋安兵衛商店では、丸薬作りを体験しました。薬都富山の歴史をさらに深く学ぶ良い一日となりました。

廣貫堂資料館見学

最終日は、本事業の成果の報告会を行いました。その後、修了式で森田教授から各人に修了証が授与されました。また、アンケートでは、全員が今回の訪日に対して「非常に満足」と答えてくれました。「さくらサイエンスプログラム」により、とても有意義な国際交流の機会をいただいたことに、心より感謝申し上げます。