2018年度活動レポート(一般公募コース)第401号
中国同済大学の大学院生が、耐震工学・構造工学の最先端研究を学ぶ
東北大学からの報告
2019年1月20日から1月27日までの8日間、「さくらサイエンスプログラム」の助成により中国同済大学から10名の土木工学専攻大学院生を招聘し、東北大学災害科学国際研究所において地震工学・構造工学に関する研修を実施しました。
研修は、免震建物を模擬した試験体を用いた計測制御実験実習、耐震工学や構造工学を専門とする研究者からの講義の聴講および日中の大学院生双方からの研究発表会・交流会と、2011年東日本大震災において津波被害を受けた地域の見学会で構成しました。
免震建物を模擬した試験体を用いた計測制御実験実習では5トンの重量のある試験体を参加学生が自分の力で押し、免震周期に合わせて共振させると小さな力で大きく揺れることを体験しました。次に、試験体に加速度センサーを取り付けて計測を行いました。計測にあたり想定外のトラブルがありましたが、むしろこのトラブルの解決作業を通して、センサーや、アンプ、計測制御装置のそれぞれの役割と機能を各自がより深く理解出来、また正確なデータを得るための地道で粘り強い作業の重要性を学ぶことができたようです。
講師を招いての講義聴講では、耐震工学に関して実施主担当者の五十子幸樹教授から免震構造や超高層ビルの地震時過大変位の抑制に効果がある複素減衰の理論について、山形大学の三辻和弥教授から免震建物の地震時挙動に関する観測と解析結果について、東北工業大学の船木尚己教授からは流体を用いた質量装置の実験結果について学び、参加学生から活発な質問と討論がなされました。
日中の学生同士の発表会・交流会では、同済大学からの参加学生全員の発表と東北工業大学及び東北大学から6名の学生の研究発表が行われました。参加学生より多くの質問が出され、日中両国の学生にとって英語でのディスカッションは良い刺激になったものと思います。
バスを借り上げてのスタディツアーでは、2011年東日本大震災において津波被害を受けた地域を訪問しました。現地を訪れてみて、東松島に比べて松島で比較的津波高さが低かったのは、日本三景の一つに数えられる美しい景観を構成する多数の島々が津波の勢いを減じる効果を発揮したからだということが分かります。南三陸町では遺構として保存されることになった防災庁舎を見学しました。周辺に建設された復興住宅や津波防潮堤、地盤のかさ上げ工事などの様子も見学しました。
これまでも東北大学と同済大学の間には長い交流の歴史がありますが、今回の研修・交流を通して、今後も更に連携を強化することを互いに確認しました。今後、参加学生の中から多くの学生が日本の大学の博士課程に進学したり、博士研究員として再来日してくれることに期待しています。
末筆となりますが、この度本事業を支援してくださった科学技術振興機構に深く感謝申し上げます。