2018年度活動レポート(一般公募コース)第399号
研究開発の高度化を目指した日中技術交流
岡山県農林水産総合センター普及連携部
産学連携推進課 杉本 真一さんからの報告
平成30年11月26日から11月30日まで、さくらサイエンスプログラムの支援により「農業分野の技術開発に関する岡山県と江西省の国際交流」というテーマで、中華人民共和国江西省農業科学院から研究者10名と引率者1名を招へいし、当センターの農業研究所と技術交流を行いました。
招へいしたのは、江西省農業科学院から優秀な青年科学研究員として推薦された方々で、農作物の栽培技術開発や新品種育成、有機物利用や農産物加工などの分野で研究しており、それぞれ一定の成果を修めている若い研究者です。
このため今回の交流は、日本における先進的な農業研究の方向や研究手法を学び今後の研究に生かしてもらうとともに、江西省の取組について本県研究者と情報交換し、相互の研究開発の高度化に資すること、また、日本に対する理解と関心を深めてもらうことを趣旨として計画しました。
交流では、開会式に続いて農業研究所副所長が全体説明を行い、儲かる産業としての農業を目指して、岡山の強みを生かした新品種育成や農作物の高品質化、環境負荷軽減のための技術開発等に取り組んでいることを解説しました。その後、所内5つの研究室が半日ずつ順番に各室の主要テーマを解説するとともに、圃場や実験室で具体的な試験手法等について説明を行いました。
最初の作物栽培についての交流では、大規模稲作を実現するための省力栽培体系や種子のの生産方法等について解説し、特に種子の遺伝的純度を維持するための管理方法に熱心な質問がありました。午後からはぶどうや梨の試食を交えてブランド化を目指した果樹栽培について解説し、日本の消費者ニーズの高さに感心していました。また、高齢化に対応した果樹の低樹高仕立ては、同じく高齢化が進む中国でも軽労働化に役立つと熱心に説明を聞いていました。
交流2日目午前は、野菜と花について新品種育成や環境制御による高品質生産等について解説し、立ったまま楽に作業ができるイチゴの高設栽培や、電照によるキクの花房形状の調節などに強い関心が寄せられました。また、この日は日本文化を知ってもらうため、午後から倉敷市にある大原美術館を案内しました。時間いっぱい西洋美術を鑑賞する人や古い家並みを散策する人など、思い思いに岡山を楽しんでもらえたものと思います。
3日目午前は、環境負荷を低減できる施肥技術や農産物の品質評価に基づく果物のブランド化などについて解説し、「おいしさ」を評価する手法や、味や匂いを測定する機器の説明を熱心に聞いていました。また、午後からは天敵を活用したナスの減農薬栽培や生態解明に基づく病害虫防除技術、病害虫の発生予察について解説し、減農薬を可能にする病害虫の管理方法に多くの質問がありました。
今回の技術交流は、来日、帰国日を除き中3日の短い期間でしたが、参加した研究者は非常に優秀で活発な技術交流となり、本県研究者にも有意義なものとなりました。また、技術交流の深化にも積極的で、今後ますますの交流が期待されます。