2018年度 活動レポート 第383号:島根大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第383号

数理科学と科学技術分野に関する日中研究交流

島根大学からの報告

2018年11月15日から22日の間、「さくらサイエンスプログラム」の支援により、北京科技大学数理学院の大学院生(碩士課程【日本の修士課程に相当】)7名と大学院生(博士課程)3名及び引率教員1名を島根大学に招へいしました(実施主担当者:杉江実郎教授)。

北京科技大学は中国で初めて大学院が開設された大学の一つであり、冶金系や化工学系に強みをもつ理工系学部を中心とした総合型の重点大学であり、中国・教育部が主管しています。島根大学と北京科技大学は2016年3月18日に大学間交流協定を締結する以前からも活発な研究交流や教育交流を続けてきました。協定締結から日は浅いのですが、島根大学は北京科技大学からの交換留学生を受け入れています。

総合理工学研究科長への表敬訪問

また、本プログラムの実施主担当者が年に2回の割合で、大学院生や学部生を数名ずつ北京科技大学に引率して(1週間程度の短期訪問)、学生間交流及び研究交流を行っています。このような実績の下、今回の「さくらサイエンスプログラム」が実施される運びとなりました。

本プログラムが開始される前の11月11日に、本プログラムの実施主担当者は島根大学の学生数名を引率し北京科技大学を訪問し、古くからの友人であり本プログラムの送り先の責任者でもある馬万彪教授と再会しました。滞在中は互いの研究連絡をするとともに、招へい学生との面談や彼らが来日後に行う予定の研究発表の練習を見守りました。4泊後の11月15日に、北京科技大学の大学院生らとともに北京空港を出航して、松江市まで案内しました。

招へいメンバー

北京科技大学数理学院の約300人の碩士課程生と約100人の博士課程生の内の多くの希望者の中から10名が厳選されて本プランに参加しました。ほとんど全員が今までに、出身大学や各省から奨学金を授与されています。また、研究集会での口頭発表や研究論文の執筆経験をもっており、将来を嘱望されているメンバーです。このような優秀な大学院生を島根大学に招いて、島根大学総合理工学研究科の大学院生(博士前期課程生及び博士後期課程生)との研究交流や異文化体験交流を通して、日中両国の青年に学術的触発を与えるとともに、それぞれが国際感覚を磨くことが本プログラムの目的でした。

国際交流担当副学長への表敬訪問

数理科学に関する日中共同ワークショップ於松江 2018

11月17日と18日には、研究発表会「Japan-China Joint Workshop on Mathematical Sciences in Matsue 2018 supported by Japan-Asia Youth Exchange Program in Science【さくらサイエンスプログラムによる数理科学に関する日中共同ワークショップ於松江 2018】」を島根大学で開催しました。北京科技大学数理学院の招へい学生と島根大学自然科学研究科数理学科コースの大学院生(留学生も含む)が各自の研究内容や得られた成果を発表し、その発表内容に対する質疑応答を通して日中の同世代の交流を促進することができました。

本研究発表会では、両大学の教員による特別講義もあり、日頃の授業では聞けない内容を学習することができました。

引率教員による特別講義

微分&差分方程式とその周辺に関する日中共同ワークショップ2018

後半には、島根県松江市から大阪市難波に移動して、大阪府立大学サテライトキャンパス(I-siteなんば)で11月21日に研究発表会「Japan--China Joint Workshop on Differential and Difference Equations and Related Topics in Osaka 2018【さくらサイエンスプログラムによる微分&差分方程式とその周辺に関する日中共同ワークショップ2018】」を開催しました。この研究集会には、大阪府立大学や岡山理科大学の教員や大学院生も参加・発表し、北京科技大学の招へい学生との友好関係を深めることができました。

研究発表会を終えて

異文化体験

プログラムでは、招へい学生は島根大学の学生とともに、関西圏にある大阪市立科学館も訪問し、日本の最先端科学技術に対する彼らの理解を深め、興味を喚起することができました。それ以外の活動として、招へい学生は松江滞在中の半日、歴史的・文化的施設を見学し異文化を体験するため、国宝松江城の天守閣に登り、松江歴史博物館を訪れました。

また、10年に一度、水の都・松江で行われる日本三大船神事「ホーランエンヤ」の歴史を知るために伝承館を見学した。さらに、みんなで出雲そばを食し、食文化の一端にも触れることができました。

国宝・松江城の天守閣まで登ろう

今回の「さくらサイエンスプログラム」によって、北京科技大学の大学院生たちは来日前に口頭発表の練習を重ねた成果が実り、今までに学習・研究してきた内容を上手に発表することができました。また、島根大学や大阪府立大学の教員や大学院生たちの質問に答えることによって、自分の研究内容の長所や短所を知ることができました。

研究内容以外にも、研究の専門分野が近い同世代の日本人学生と交流することによって、多くのことを学んだと思われます。また、日本の科学技術や生活・文化・伝統の一端に接した経験は今後の人生にとって、良い思い出になることでしょう。その経験や思い出が再来日の契機となり、ひいては島根県や日本各地で仕事や研究をすることに繋がることを期待します。

尚、本プログラムの全日程について、引率教員であった魏海瑞副教授によって北京科技大学に報告書が提出され、数理学院のホームページにも掲載されました。
http://shuli.ustb.edu.cn/xueshuhuodong/2018-12-12/1108.html