2018年度活動レポート(一般公募コース)第357号
日・タイ研究交流の深化を目指して
大阪大学大学院理学研究科からの報告
平成30年11月7日(水)~11月14日(水)、大阪大学大学院理学研究科では、タイのチェンマイ大学、プリンス・オブ・ソンクラー大学、ヴィジャシリメディ工科大学、コンケン大学から教員7名、大学院生10名、合計17名を迎え、研究交流プログラムを実施しました。
タイでは近年急速に教育経済レベルが高まっており、今後の人材育成や基幹産業となりうる化学工業の拡大に力を入れています。今回のプログラムでは、当該地域の若手研究者や学生を招へいし、関西圏の研究施設や企業を見学してもらうことで日本への関心を高め、将来タイと日本の架け橋となる人材の芽を育てることを企図しています。
来日した一行は、主催校である大阪大学でのオリエンテーション、学科紹介等の後、分析センター、学生実験室、博物館などの大阪大学の諸施設を訪問し、将来の日本留学や共同研究実施を視野に入れた、研究・教育に関する意見交換等を行いました。大阪大学では、講習を受けることにより、ほぼすべての大型分析装置を学生が自主分析し、技術を身につけることが可能です。このような教育環境はタイには見られず、非常に関心を持たれました。一方で、タイでは修士課程以上の高等教育はすべて英語が公用語となり、英語力に優れた学生が排出できるよう、仕組みが整っていることが紹介され、日本側の参加者から英語教育について盛んに質問が投げかけられました。
理学研究科化学専攻内の研究室ツアーならびに体験実験も実施しました。研究室ツアーでは、各研究室の研究トピックスを紹介いただき、研究設備や学生の研究活動の様子が詳細に説明されました。今回は来訪人数が17名と多かったのですが、班に分かれ、各々のゲストがしっかり質疑応答に参加できるように配慮いたしました。その甲斐もあってか、研究現場の様子がしっかりと理解いただけたように思います。体験実験では、受け入れ研究室の実験設備を活用し、分子吸着実験、質量分析、X線回折などの最新鋭の装置を用いた物質分析を実施しました。これらの実験を機に、今後の国際共同研究の可能性について教員間で具体的な打ち合わせがなされました。
世界最高性能を誇る放射光研究設備であるSPring-8や、関西を拠点に東南アジアへ展開する化学メーカーであるエスケー化研株式会社への訪問も実施し、それぞれの施設見学を行いました。Spring-8では実際の研究の現場であるビームラインのハッチ内にも立ち入らせて現場の研究者と交流させていただきました。エスケー化研株式会社では、日系企業のタイ展開の様子が紹介され、タイ人学生の企業への受け入れについて意見交換がなされました。
さらに、合同研究発表会として、ミニシンポジウムを実施いたしました。今回のゲストはほぼ全員が化学を専門とする研究者、学生さんであり、大阪大学の化学系研究者とともに活発に討議がなされました。タイでは、これまでに少人数の研究者が集まっての国内シンポジウムは開催されたことがなく、タイの4大学の化学系研究者が一同に集い、討論を行ったのは今回のミニシンポジウムが最初の経験であり、非常に素晴らしい機会になったようです。
シンポジウム後の交流会にはホスト研究室の学生とタイの学生に加えて、大阪大学の教員・学生が多数参加し、大変な盛会となりました。平時は英語が苦手で物静かな日本人学生が、タイの学生に触発され、ハキハキと英語で交流を深めている様子に主宰者側もびっくりしました。
見学や討論会の合間に、姫路城、万博公園、国立民族博物館などの関西圏の文化施設訪問も実施しました。忙しいスケジュールの息抜きにもなり、日本の文化に触れる機会にもなりました。
参加者からは、将来、日本や大阪大学へ学生や研究者として再び来たい、といった感想が聞かれました。今回の機会を契機に、新たな大学間協定の締結や若手研究者レベルでの研究交流活動や学生の短期/長期留学がより活発になることをお互いに期待しています。