2018年度活動レポート(一般公募コース)第332号
各専門分野から多面的に学ぶ日本の防災技術
大阪府立大学工業高等専門学校からの報告
大阪府立大学工業高等専門学校では、2018年12月8日(日)から15日(土)にかけて、防災技術をテーマとしたプログラムを実施しました。防災技術はさまざまな専門分野からのアプローチによる努力の結晶であるため、総合工学システム学科を有する本校の強みを活かして多面的な視点から防災技術を学習・体験し、さらに最先端の防災技術を見学することで、将来的な日本での就学・就職に広く応えられるプログラムの提供を目指しました。送出し機関はインドネシア共和国のダルマプルサダ大学で、文学、経済学、工学、そして海洋工学の4つの学部に渡って10名の学生を受け入れました。
初日は空港から本校に移動してオリエンテーションを実施し、2日目の月曜日から、歓迎セレモニーに続いて本格的にプログラムが開始されました。まずは【防災技術研修①化学系】として、速乾性モルタルを用いた実験を行いました。一般的な実験用供試体ではなく手形を作成することで、学生たちは硬化のプロセスや速乾性について文字通り触れながら実感できたようです。続いて【防災技術研修②建設系】として、振動装置および耐震検討用住居模型を用いた実習を行いました。固有周期と共振についての解説が行われた後、耐震・制震・免振の違いと役割について、目の前で実験を行いながら学習しました。さらに、学生達自らが住居模型を作成しつつ、耐力壁の役割と有効的な配置方法についても学びました。
3日目は【防災技術研修③機械系】として、耐火断熱材に関する講義を行いました。実物を用いて目の前でリアルタイムに実験を披露することで、その効果を深く実感できたようです。続いて【防災技術研修④ロボット系】と【防災技術研修⑤情報系】を続けて実施し、災害現場で活躍するレスキューロボットについて学習しつつ、 VRシミュレータを用いてロボットの遠隔操作についても体験しました。さらに3日目には、防災用非常食を自ら作成しての試食会や、本校学生との文化交流会も実施されました。
4日目は【防災技術見学Ⅰ】として、淀川水系統合管理システムならびに降雨観測用Xバンドレーダー設備の見学を実施し、水害対策の根幹を成す統合管理システムや、河川水量ならびに水防設備がどのように遠隔管理されているかを学びました。また、新型の降雨観測用レーダーの仕組みと運用方法についても学習しました。午後からは【防災技術見学Ⅱ】として天ヶ瀬ダムならびに放流設備工事現場の見学を行い、大型アーチダムの仕組みや管理方法、さらに減勢池部の大口径トンネルの工事風景を見学し、防災を担う最新の施工技術について学習しました。
5日目は【防災技術見学Ⅲ】として、あべのハルカスの制振装置や耐震ブレース等の見学を実施しました。日頃は見ることの出来ないバックヤードの見学を通じて、日本で最も高い超高層ビルが地震や風水害に対してどのような技術で対策されているかを学ぶことができました。午後からは【防災技術見学Ⅳ】として、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターの見学を行いました。大震災の被害と復興の歴史、さらに技術の進歩について学習しました。
6日目は【防災技術研修⑥電気電子系】として、災害時の情報収集システムならびに防災無線技術について、東大阪市役所の危機管理センターをお借りして講義を行いました。災害対策本部の大規模なシステムや防災行政無線室の装置を目にしながら受講することで、より深く理解できたようです。続いて【防災技術見学Ⅴ】として、東大阪消防局高機能消防指令センターの見学を行いました。実務中の消防指令センターを訪問し、さらに消防車両を見学することでソフトとハードの両面から、日本の救急消防の技術を学ぶことができました。さらに午後からは【防災技術研修⑦総括】として、本校学生の防災に関する研究発表を聴講し、今後の防災技術のあり方についてのディスカッションを行いました。続いて修了式と懇親交流会を行い、プログラムを締めくくりました。
最後に、このプログラムに参加した学生達から帰国後、素晴らしい機会が与えられたことに対する感謝のメールが届きました。また、最終日に行ったアンケートにおいても全参加者から非常に有意義であったという感想を得ることができました。このような機会を与えていただいた「さくらサイエンスプログラム」をはじめ、関係者の皆様に心からお礼を申し上げます。