2018年度 活動レポート 第331号:宮崎大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第331号

アジア地域の産業動物防疫に関する中核人材育成による国際防疫ネットワークの強化

宮崎大学産業動物防疫リサーチセンターからの報告

宮崎大学産業動物防疫リサーチセンター(CADIC)では、2018年12月7日から12月16日の日程で、タイ国チュラロンコーン大学、カセサート大学、マヒドン大学、チェンマイ大学、コンケン大学(いずれも獣医学部)から研究者4名、学生1名、農業協同組合省・畜産振興局の研究所および動物衛生研究所から研究者5名の合計10名を招へいしました。

CADICは、産業動物の実践型教育・研究を実施できる広大な畜産フィールドを有する宮崎県にあり、過去に口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザの防疫活動を行政や産業動物獣医師等と連携して実施した経験もあることから、これらの利を活用して、アジア諸国の産業動物防疫対策に携わる人材の高度専門家を育成する拠点として活動しています。

宮崎大学獣医研究棟前にて

本プログラムでは、宮崎県内の産業動物関連施設を訪問するため、防疫の観点から訪日前に農場に立ち入ったり家畜に接触しないこと、さらには最初の2日間は東京に滞在し、ダウンタイムを設けています。そのため、東京滞在中に江戸東京博物館を訪問し、江戸・東京の歴史と文化を学び、その後、空路で宮崎県へ移動しました。

宮崎大学では、研修初日にオリエンテーション、そしてCADICの概要説明と施設見学を行いました。ウェルカムパーティでは、教員だけでなく、感染症関連の研究室の学生や留学生も参加し、親交を深めました。

翌日から講義・実習、施設見学、交流セミナーに加え、文化交流や観光を組み込んだプログラムを実施しました。講義では、2010年に宮崎県で発生した口蹄疫について学ぶと共にCADICで開発された口蹄疫ウイルスを簡易・迅速に診断できる遺伝子診断法についての実習を受けました。

講義の様子

さらに、高崎食肉衛生検査所およびミヤチク高崎工場(対米輸出対応食肉処理場)の施設を見学しました。タイでは食文化の変化により牛肉消費量が増加傾向にあり、宮崎牛を含む牛肉の輸入に力を入れていることから、食肉の衛生管理に非常に関心が高く、研修生からは多くの質問が挙がりました。

高崎食肉衛生検査所見学

文化交流イベントとして企画した着物の着付けや茶道の体験では、研修生は母国にはない四季折々のお茶菓子があることに興味を持ち、着物を着た姿を写真撮影して楽しんでしました。

最終日には、感染症研究を行っている研究室に所属する留学生を含む大学院生と研修生との交流セミナーを行いました。セミナーでは、参加者がそれぞれの所属先で現在行っている研究成果を英語で発表しました。研修生は本学で行われている研究テーマに非常に興味を示し、活発に意見交換を行っていました。

交流セミナーの様子

今回のさくらサイエンスプログラムは、CADICとタイ国内の大学や研究所との防疫コンソーシアムの構築を目指し、3年間の継続プロジェクトとして実施したものです。本プログラムを含む一連の取組により、昨年タイ国内の大学にCADICのコラボレーション・ラボを設置する事ができました。今回が3年目となる研修でしたが、今後も人材交流を継続しながら国際共同研究等を通じて、国際防疫活動に貢献できる人材の育成につなげていきたいと考えています。このような貴重な機会を与えていただき、深く感謝申し上げます。

修了書授与