2018年度 活動レポート 第284号:海洋研究開発機構

2018年度活動レポート(一般公募コース)第284号

フィリピン大学の若手研究者がラジオゾンデ観測を学ぶ

海洋研究開発機構からの報告

海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)では、フィリピン大学環境科学・気象学研究所の若手研究者4名を招へいし、2018年11月25日~12月1日の日程で、科学技術研修コースのプログラムを実施しました。

よこすかをバックに記念撮影

今回のプログラムは、気象学における基本的な観測の1つである「ラジオゾンデ観測」で得られたデータの解析技術をテーマとしています。ラジオゾンデとは、温湿度、気圧、風向・風速センサーを気球に取り付け、上空の大気の状態を計測する装置で、得られたデータを気象・気候学として活用するためには、まずデータ精度を十分なものにするための補正処理を行い、その上で、各種物理量を算出して、現象の解明に役立てることが必要です。

JAMSTECは、国際プロジェクト”YMC”の拠点機関の1つとして、フィリピンを含む東南アジア各地にて、観測実績を有するとともに、テーマでもあるラジオゾンデに関しては、品質管理の責任機関です。今回のプログラムでは、フィリピン大学で実際にラジオゾンデのデータを用いた研究をテーマとする研究者や修士課程の学生を招へいし、JAMSTECにおけるラジオゾンデ観測データの解析手法を学んでいただきました。また、単にその手法を教授するだけでなく、解析や数値モデルを行っている研究現場を直接見学し、その担当者と議論する機会を設けることにより、研究の進め方に関するノウハウの習得や、共同研究テーマの着想につながるきっかけを提供しました。

プログラム初日は、JAMSTEC本部(神奈川県横須賀市)において、施設見学を実施し、各種展示や自律型無人探査機などを見学しました。その後、JAMSTEC研究者による熱帯気象学や、ラジオゾンデのデータ品質管理に関する講義を実施しました。

深海巡航探査機「うらしま」の見学

2日目は、引き続き横須賀本部にてラジオゾンデデータ解析事例などの講義を実施したほか、岸壁に着岸中の深海潜水調査船支援母船「よこすか」を見学しました。

データ解析について説明を受けている様子

3日目はJAMSTEC横浜研究所(神奈川県横浜市)において、「地球シミュレータ」等の見学を行いました。続けて、ラジオゾンデデータを活用した数値モデル研究についての講義を実施しました。

4日目・5日目は、具体的な演習として、JAMSTEC研究者の指導を受けながら、ラジオゾンデデータの品質管理・解析を行いました。

自分の解析手法について相談中

招へい者には自身が現在取り組んでいる研究テーマを紹介してもらい、それに用いるデータを持参してもらったので、各テーマにあわせた議論や検討をすることができました。これにより、例えば修士論文での解析項目を新たに追加するなど、目に見える形で招へい者自身が成果を持ち帰ることが出来ました。特に3人の学生は、日本だけでなく海外渡航自体が人生初であったこともあり、その興奮とともに帰国早々に指導教官への報告がなされ、指導教官からも、予想以上に彼らが具体的な研究目標を持つようになったことに対して謝意が伝えられています。また同時に、今後も同様の機会を他の学生に与えたいとの希望も聞いています。

また、フィリピン大学とは、今回の交流をきっかけにして、今後の現地データの取得に関する新たな協力関係を構築する話も出てきており、受入機関としても大変有意義なものとなりました。

受入研究者と、修了証書を手に記念撮影