2018年度活動レポート(一般公募コース)第279号
都市・建築の環境とエネルギーについて考える日中科学技術交流プログラム
東京大学生産技術研究所からの報告
平成30年10月28日から11月3日の7日間の日程で、さくらサイエンスプログラムによる助成を受け、中国・南京大学建築・都市計画学部の学生10名と教員1名が来日しました。
受け入れ担当者(東京大学)と招へい者(南京大学)はいずれも都市・建築の環境工学または計画学を専門としています。近年、世界的な都市化の傾向が著しく、高密度に形成された都市は、ヒートアイランドや大気汚染などの環境問題を引き起こすとともに、エネルギーの大量消費地としての課題を抱えています。本交流プログラムではそのテーマを「都市・建築の環境とエネルギー」とし、アジアでも第一の経済国となり今も発展を続ける中国の学生を受け入れ、日本の都市・建築に関する環境技術を体験してもらうとともに、将来の自国や世界の環境に関して考えるきっかけを与えることを目的としました。
招へい者らはまず受け入れ機関である東京大学生産技術研究所を訪問しました。同研究所の活動概要の説明を受けるとともに、同研究所保有の環境無音境界層風洞や人工気候室、無響室などの環境工学の研究に関わる主要実験施設の見学とこれらの実験装置を用いた研究内容を学びました。また、東京大学駒場Ⅰキャンパスを訪れ、様々な環境配慮技術を取り込んだゼロ・エネルギー・ビルディング実証建物などを見学しました。
東京大学と南京大学それぞれの学生および教員からの研究発表を主内容とした研究交流会も実施しました。それぞれの国での課題・問題意識を共有するとともに、研究手法や成果に関する意見交換を行いました。また、この交流会での情報交換に基づき両大学での将来の共同研究に関する協議を行いました。
滞在期間中には、東京大学本郷キャンパスや早稲田大学早稲田キャンパスも訪問し、招へい者らに日本の大学や学生生活の一端を感じてもらいました。また、東京国立博物館を訪問し日本の歴史や文化に触れてもらうとともに、日本科学未来館を見学し先進的な科学技術や地球環境の現状を学んでもらいました。
1週間の滞在というのは濃密なスケジュールでありながらもあっという間で、招へい者からはまた来日したいあるいは日本で研究したいと言った感想も聞こえてきました。また、さくらサイエンスプログラムという素晴らしい助成制度へ感謝する声も多く聞かれました。受け入れ担当者としても、招へい者ら機関の教員または学生の学術的興味や研究の状況を知ることができ、また受け入れ機関の学生も自身の研究や研究施設、その他見学先に関して招へい者に説明を行うことによって新たな刺激や理解の深まりが得られるなど、大変実りある交流プログラムであったと思います。本助成に対して深く感謝申し上げる次第です。