2018年度 活動レポート 第266号:帝京大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第266号

機械工学・情報電子・バイオサイエンス分野に於ける日本の先端的研究の実験演習プログラム

帝京大学宇都宮キャンパスからの報告

2018(平成30)年12月9日(日)~16日(日)までの8日間、科学技術体験プログラムの実施を行いました。参加したインドネシア共和国2大学(President大学、Atma Jaya Catholic 大学)各大学学生6名、教員1名、合計で14名の参加でした。宇都宮キャンパスの理工学部(機械・精密システム工学科・情報電子工学科・バイオサイエンス学科)3学科にそれぞれ4人の学生が参加し、各指導教授の研究に入りました。短時間ながら中身の濃い充実した研究が行われたため、参加学生の多くが本学での更なる研究を強く希望するなど、素晴らしい成果につながったことは特筆すべきことです。さくらサイエンスプログラムの参加に改めて感謝すると共に、JST初め、文部科学省、各企業及び日本国国民の皆様に感謝申し上げます。これから、本学においての研修の一端を報告させていただきたいと思います。

バイオサイエンス学科

PCRによる雌雄異花異株植物ホウレンソウの雌雄同定と植物ホルモンの測定

ホウレンソウは、雄花と雌花が別々の個体に形成される雌雄異花異株植物です。また、ホウレンソウはロゼット植物であり、長日条件によって花成が誘導され、抽苔、開花します。

花が形成される前では雌雄を形態的に見分けることはできませんが、ホウレンソウの性は遺伝的に決定していることが分かっています。本研究では、花芽が形成される以前のホウレンソウの芽生えからDNAを抽出し、雄特異的プライマーを用いたPCR法によって、遺伝的雌雄判定を行いました。また、それぞれの植物から植物ホルモンを抽出し、最先端のLC-MS/MSを用いて測定することで、雌雄間で内生植物ホルモンに差が生じるのかについても検討しました。

写真1
植物からのホルモン抽出実験の様子

情報電子学科

多感覚情動情報処理研究

コミュニケーション場面において人間が意識的・無意識的に発する音声・表情、無意識に反応する精神性発汗や心拍の変動など、人間のマルチモーダルな情報を処理し、感情のコミュニケーションが抱える問題を工学的・認知科学的に解明しています。現在は主に下記三つの研究課題を中心に研究を行っています。

①リアルタイムマルチモーダル感情認識システムの構築
②マルチモーダル情報を利用したキャラクターエージェントに対する他者性認知の客観評価手法の検討
③プレイヤー自身の感情制御を余儀なくされる感情入力インタフェースの開発
 
<研究体験の目的と実施内容>

上記研究のうち、「②マルチモーダル情報を利用したキャラクターエージェントに対する他者性認知の客観評価手法の検討」を体験させるため、実際の実験に使用しているキャラクターエージェント対話システムMMDAgentを用いて、キャラクターエージェントとの対話を実現する作業に従事させました。一般的な対話システムは、有限状態トランスデューサ(FiniteState Transducer、 FST)を用いて、人とのインタラクションを実現します。MMDAgentにおいても、このFSTを作り込むことによって、人の音声発話に対するキャラクターのリアクションを可能とします。本プログラムの参加者は、自分が実現したい対話シナリオを作成し、その対話の遷移に従って、FSTを作り込むことで、コンピュータとの対話を実現するための状態遷移に不可欠なFSTの仕組みを理解させることが、本研究体験の目的です。

また、迎え入れる研究室の学生にとっては、異文化交流のよい機会です。研究室内の学生に研究体験参加者のサポートを行わせることで、言語・文化の異なる相手とのコミュニケーションについて理解を深めることも目的としています。

写真2
研究体験の様子
<成果>

2種類の対話シナリオを作成し、MMDAgentに実装しました。用いた言語は日本語です。FSTの記述方法および規則を習得し、状態遷移における簡単な条件分岐のFSTを記述できるようになりました。日本語入力における発音・発声の問題により、音声認識がスムーズに行われない場合も、それを回避するための条件をFST内に記述することで、フォローすることができるようになりました。

また、研究室内の学生にとっても、異文化交流のいい機会となりました。英語を母語としない学生は、コミュニケーションにおいては必ずしも英語を必要としないということを学ぶとともに、研究体験参加者が抱える技術的な問題を理解するためには英語の習得が必要であるという認識を持ったようです。

写真3
成果発表会の様子

水中ロボットの開発

こちら側で事前に水中ロボットの開発に必要な部材(プロペラ、スラスタ)や制御回路(ArduinoProMini、ESP32)を用意しておき、学生さんが1グループ2名で2グループに分かれて、下記の項目を体験しました。

(1) 水中ロボット操作用の操作インタフェース作成

どのように操作してロボットを動かすかを検討して、操作インタフェースを作成しました。これを作成するにあたり、Web サービスの一種であるBlynkを用い、IoT デバイスとして利用することも可能なESP32の制御回路を用いました。

(2) 水中ロボットの制作

スラスタの配置、防水室内部の結線、制御プログラムの作成各グループが、4 個のスラスタを好きな配置で設置するとともに、防水室内における制御回路への結線と制御プログラムの修正を行いました。

(3) 実験

時間的な余裕がなかったため、1グループが、(1)と(2)の工程で作成した水中ロボットを実際に水中に入れて動作可能かを実験的に検証しました。

写真4
水中ロボットを開発している様子

機械・精密システム学科

自動車の実路燃費に関する研究

自動車の実路燃費に関する研究を実路試験の実施含めて行いました。期間中に短時間ですが自動車の燃費についての講義も行い、参加学生の自動車の燃費に関する技術に関して理解を深める一助としました。

なお、研究成果に関しては、最終日の発表会にて20分間の研究発表を行い、活動を修了しました。

写真5
成果発表後の集合写真