2018年度活動レポート(一般公募コース)第201号
ミャンマー国のサガイン断層に沿った地震活動度の違いを生み出す地質学的要因
金沢大学からの報告
2018年10月3日から10月23日、さくらサイエンスプログラムによりミャンマー・マンダレー大学から8名を招へいし、共同研究プログラムを実施しました。
ミャンマーを南北に横断する大断層(Sagaing断層)はインド大陸の衝突に伴い形成され、断層の運動に伴う地震が歴史上も発生しています。このSagaing断層に沿った地震の活動度(動きやすい・動きにくい領域)には地域差があることが知られてきました(Maurin et al.、 2010 Geology)。
今回の参加者らの居住区であるマンダレー地域を含むSagaing断層沿いでは、断層活動に伴う自然災害(地震活動、地滑り)の影響を受けており、断層の活動の地域差の要因の解明が社会的にも求められています。今回のプログラムでは、『物質的に変形しやすい蛇紋岩の分布がSagaing断層活動度を制御している』という仮説をたて、断層に沿う蛇紋岩体の分布と成因を検討することを目的としました。特に、蛇紋岩の特徴を明らかにし、近傍に産する蛇紋岩との比較を行います。
ミャンマーからの参加者を早速待ち受けていたのは、歓迎ランチパーティー。研究室メンバーや、分析でお世話になるホスト側も参加して、金沢大学内で食事をしながら初の交流がスタートしました。美味しい食事のおかげで、リラックスした雰囲気の中で交流が行われていました。
日本に到着してまだ間もない週末に、日本でも有名な蛇紋岩帯である長野県に分布する八方尾根蛇紋岩体を調査。ここでは、様々な変形を受けた蛇紋岩、熱変成作用を受けた蛇紋岩が観察されます。河原で綺麗に磨かれた蛇紋岩を観察し、それぞれの特徴について理解しました。そして翌日は、ゴンドラとリフトを乗り継いで、さらに蛇紋岩体本体の調査を行いました。ゴンドラから地形と地質を観察するのは、潜水艇に乗って観察するのとよく似ているということを説明しました。
大学に戻ってからは研究の打ち合わせから。これまでの研究内容を紹介してもらい、これから共同研究を行う試料の基礎知識を共有することができました。
研究内容の共有ができた後は、実際の分析準備と分析に取り掛かることとなりました。金沢に持ち込んで来た試料を分析が可能な形へと処理していきます。岩石をカッターで切断し、グラインダーで研磨。地道な作業ではありますが、試料の出来が分析の良し悪しを決めることを伝え、注意深く試料作成に取り組んでいました。
これらの試料を電子顕微鏡観察・分析、ラマン分光分析を行うことで、蛇紋岩の特徴が明らかになってきました。これらの研究成果について議論を重ねました。
また、できる限り、天然の資料について観察してもらうことを企画し、新潟県フォッサマグナミュージアムで、蛇紋岩と密接に伴って産出するヒスイに関する展示を見学しました。蛇紋岩の形成とヒスイの関係を学びました。
さらに、石川県内でこれまで詳細がわかっていない超苦鉄質岩の調査などを行いました。
期間内に、子供向けの岩石標本作り教室が開催されたので、このイベントに参加し、地球科学のアウトリーチの重要性について議論をすることもできました。
最後に修了証書を、絶好の天気の中で一人一人に渡しました。ミャンマーからの参加者には金沢大学Tシャツを、ホストにはミャンマーの民族衣装がプレゼントされました。