2018年度 活動レポート 第187号:キャセイ・トライテック

2018年度活動レポート(一般公募コース)第187号

中国の優秀な若者が日本のIoT技術の先進性を学ぶ

キャセイ・トライテック株式会社からの報告

キャセイ・トライテック(株)は、さくらサイエンスプログラムによる支援を受け、2018年11日12日から11月21日,中国科学技術大学の大学院5名、大学生5名、及び引率教員1名を日本に招きました。

(株)エッチ・ケー・エス、東京大学、科学技術館を見学し、研究環境を理解し、キャセイ・トライテック(株)での社内研修を通じて、その業務内容や通信業界の現状、課題、動向に対して理解を深めました。また、余暇の時間には美術館、歴史文化財を訪れ、日本の歴史、文化をより深く触れることができました。

①社内研修および企業見学

■キャセイ・トライテック株式会社

キャセイ・トライテック社での初日は、学生達の母校の先輩である中原隆志社長(中国名:戴志堅)、および謝聞佺専務よりIoT(Internet of Things)の定義、歴史的な経緯、未来へのロードマップを始め、キャセイ・トライテック社のIoT関連製品やIoT応用開発案件、HTTP通信インターフェース等について分かりやすく説明していただきました。

質疑応答の時間では、学生達からの積極的な質問が飛び交い、学生達の専門分野と研究内容に関連した様々の質問が出され、中原社長からは熱心な回答をいただきました。

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中原社長からの談話の後、技術本部の牛亜平さん、張磊さんからの3日間の研修の説明を受けました。研修の内容は無線を用いた計測機を使って、温度・圧力・照度の測定をするというもので、LUA言語を使用してプログラミングを体験します。この計測機は電流センサの信号変換機能を内蔵したもので、電流を直接測定することによりサーバー側での電力計算を容易に行なうという画期的な製品です。

2日目からはコンピュータ学部の学生たちを中心に、3グループに分かれ、プログラムの実装に取りかかりました。コンピュータ学部の学生にとってLUA言語は初めて体験する言語であり、グループ内で議論したり、牛さんや張さんに質問する場面も多く見られました。

3日目には中原社長、謝専務も出席の上、研修の発表会が開かれました。各グループの個性や創造を活かしたパワーポイントの発表が、会場を大いに沸かせました。中原社長からは学生達の成果への高い評価と、今後につながる多くのアドバイスを頂きました。今回の社内研修を通して、学生たちはIoTを身近に感じることができ、システム開発に対して更に一層の興味を持つようになりました。

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■株式会社エッチ・ケー・エス

会社訪問では、富士山の麓にある(株)エッチ・ケー・エスを見学しました。エッチ・ケー・エス社の坂詰部長より、会社の歴史、業務内容、キャセイ・トライテック社との提携開発製品の説明を受けました。説明の中で、エッチ・ケー・エス社は自動車チューニングパーツでは国内シェアNo1の会社で、オリジナルマフラー、サスペンション、ターボチャージャ、電子制御製品等、多くの機器を開発していることを紹介していただきました。車載実験室では、各種メーカーの自動車のエンジンパーツが並んでおり、いろいろなメーカーとの共同開発に力を注いでいるとのことで、日本の製造業の真摯な態度に感動を覚えました。

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■IoTプラットフォームを活用した駐車場向けカメラセンサーシステムの開発現場

キャセイ・トライテック社では、IoTプラットフォームを活用した駐車場向けカメラセンサーシステムの開発に携わっています。このシステムは個人や法人が所有する空き駐車場と、駐車場を利用したいドライバーをマッチングするパーキングシェアリングサービスシステムです。

今回はこの「駐車場向けカメラセンサーシステム」を試験運用している現場を訪れました。

このシステムは、利用者の空き駐車場の検索から、事前予約、決算までを全てインターネットで可能にした利便性に優れたシステムです。現場を見学した学生たちは、身の回りで動いているIoTを肌で感じることができ、日本の先端技術に感心していました。

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②大学訪問

■東京大学

東京大学のVDEC(VLSI Design and Education Center:大規模集積システム設計教育研究センター)で研究をされている池田誠教授の元を訪れ、講義をいただきました。池田教授からはVDECの現状報告と、クラウドのハードウェアセキュリティとIoTとの関連性について説明をいただき、その後、本郷キャンパス内の武田先端知ビルを見学しました。ビルの地下にはクラス1、100、1000に分かれたスーパークリーンルームがあり、ここで先端科学の様々な実験が行われるとの説明がありました。

学生たちの質問に対して、池田教授からは丁寧な回答をいただき、帰国後も引き続きに研究開発に取り組んで、大きな成果を上げるようにとの励ましのお言葉をいただきました。その後、東京大学大学院の卒業生でもある中原社長に本郷キャンパスを案内して頂き、厳粛な校風とアカデミックな雰囲気に感動を覚えました。

③博物館の見学

■科学技術館

千代田区にある科学技術館を見学しました。科学技術館は身近な科学の不思議から宇宙をとりまく壮大な不思議とその仕組み、科学を利用して技術を発展させてきた営みをさまざまな展示とワークショップによって紹介していました。展示室は2階から5階まであり、原理の科学、生活の科学、最先端の科学、環境の科学に分けて展示されていました。その他、シミュレーション・ゲームやパズルの体験コーナーも設けられていました。

学生たちが一番興味を示したのは、自動車のハイブリットエンジンの展示です。ハイブリッドカーは、ガソリンエンジンと電動モーターの長所を組み合わせて、エネルギーを無駄なく使って走らせるものですが、クルマを改造したモデルの展示により、その仕組みを直に学ぶことができました。訪れた学生達は科学技術館に展示されている多様性に満ちた様々な展示物を見学し、日本の優れた技術を深く理解することができました。

④日本文化の体験

■箱根美術館

箱根で最も歴史が長い箱根美術館を見学しました。館内には鎌倉・室町時代に製作された陶器、壺や縄文時代の土器から江戸時代まで日本のやきものを中心に展示されていました。中国の清朝時代の青銅器も展示されており、当時の日本と中国間の盛んな文化交流を思わされました。庭園内の紅葉も真っ赤に色づいて、思わず写真に収めたくなる景色でした。奥庭の「石楽園」や茶室の「真和亭」では、日本伝統の抹茶と四季のお菓子を味わえることもできました。美術館の見学を通して、日本の文化に触れることができ、秋深まる美しい庭園では心まで癒された感じがしました。

■浅草寺

東京都内で最古の歴史を持つ浅草寺を参拝しました。風神像、雷神像がまつられた赤い提灯で有名な雷門をくぐり、境内に入ると平日にも関わらず多くの人で賑わっていました。中国とは異なる雰囲気の参道とお寺の様子に学生達は興味津々で、境内の様子を写真に収めていました。学生達は、手水所で手と口を清め、香炉から立ち上る線香の煙を身体に浴びた後、各自思い思いの将来の夢を託し、手を合わせてお参りしていました。

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2018年11月21日さくらサイエンスプログラムの訪問団である学生達は、帰国の途に就きました。今回参加した学生達にとって、全員とも日本は初めて訪れる外国で、最初は非常に緊張していましたが、礼儀正しく、優しく接してくれる日本人に次第に打ち解けることができ、帰国する際には、全員が「また日本に来たい」、「ぜひ日本に留学したい」と口を揃えて感慨にふけっていました。社内研修、企業訪問、東京大学見学等で、日本の先端技術に触れるとともに、異国の日本において各界で活躍する中国科学技術大学の先輩方にも触れることができ、学生たちは今後の夢を思い思いに描いていました。

今回のプログラムの成功は、さくらサイエンスプログラムの多大なご支援、訪問企業、訪問機関の多大なご協力、および心温まるご支援によるものです。交流プログラムに御尽力頂いた各研究機関、各企業の皆様に心から感謝致します。大変ありがとうございました。