2018年度活動レポート(一般公募コース)第177号
フィリピンの薬学教育者および薬学生のための薬学教究・文化交流プログラム
岡山大学からの報告
2018年10月14日から21日までの8日間の日程で、「さくらサイエンスプログラム」の支援のもとに、フィリピンの薬学教育領域でトップクラスのサン・カルロス大学(University of San Carlos)から薬学科を統括する健康管理学部のY. Deliman学部長を引率者とする一行6名(若手教員1名、大学院修士課程学生2名、学部学生2名:何れも薬学科)を岡山大学に招へいすることができました。
サン・カルロス大学は、フィリピン中部のセブ島の中心地であるCebu Cityに4つのキャンパスを有しており、フィリピンで最も歴史のある大学とされ、岡山大学とは2018年1月に大学間交流協定を締結しました。サン・カルロス大学は、薬学教育領域でも同国のトップクラスの総合大学であり、2018年8月には岡山大学から薬学部教員3名と岡山大学病院薬剤部薬剤師1名、さらに薬学科学生5名が海外研修として同大学を訪問しています。
岡山大学薬学部は、全国の薬系の全大学が薬学教育に関する外部評価を受ける薬学教育評価機構による第1期の審査で、国立大学として最初の認証を受けており、海外の薬系大学からも注目されています。本プログラムでは、岡山大学薬学部での先進的な薬学教育、およびこれを支援いただいている岡山大学病院薬剤部および地域保険薬局での実習の視察・体験と科学技術の平和利用の願いや日本の伝統工芸などを見学する薬学教究・文化交流プログラムを実施しました。
一行は、日本の薬学教育(薬剤師養成を目的とした課程)システムの概要の紹介を受けた後、特に関心の深い実務実習への導入教育として、岡山大学薬学部での「臨床準備教育」、および薬学生の技能及び態度が一定の基準に到達しているかを客観的に評価するための試験であるOSCE(Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)の実施概要を見学しました。
併せて、薬学生も利用する岡山大学の医療教育統合開発センターでの患者シミュレーターを用いた先進的な実習(医学部保健学科の実習)も見学しました。さらに、薬学生の実務実習先でもある岡山大学病院薬剤部と保険薬局(マスカット薬局本店)を訪問し、それぞれ先進的な調剤システムと日本における病院薬剤師業務、および保険調剤・監査・服薬指導・医薬品情報などのシステムおよび実習について知見を深めました。また、岡山大学薬学部で開講されている最新の研究成果を紹介する英語での大学院(博士前期)の講義にも参加する機会があり、研究成果を正しく臨床に活用するために基礎学問の重要性を改めて学習することができました。
文化交流として、原爆ドーム・広島平和記念資料館と宮島(厳島神社)の見学、さらに倉敷美観地区の訪問をしました。日本の伝統文化や伝統技術を知るだけでなく、科学の平和利用について考えていただく良い機会となりました。特に、招へいした学生さんの一人が帰国前に「もっと原爆について自分でも調べてみたい」と語ってくれたことが印象的でした。
岡山大学薬学部からサン・カルロス大学への学生派遣プログラムは次年度も実施予定であり、サン・カルロス大学側からも本プログラムの成功を活かし、是非次年度も「さくらサイエンスプログラム」に採択され、相互交流が継続できるように期待したいとのことでした。