2018年度活動レポート(一般公募コース)第165号
グローバルな視点に立った薬理ハイブリッド型の日・タイ研究交流
弘前大学からの報告
平成30年9月14日~9月23日の間、さくらサイエンスプログラムにより弘前大学の協定校であるタイ王国のチェンマイ大学とコンケン大学の薬学系から、合計9名の優秀な大学院生を招へいして、最先端の科学技術分野での研究交流・体験プログラムを実施しました。
研究交流の内容は、弘前大学大学院理工学研究科准教授・宮本と協力教員の保健学研究科教授・中川先生による、X-バンドおよびQ-バンドESR法を用いた色素系抗酸化物による活性酸素種の捕捉に関するものであり、招へい者たちは、タイ国内には導入されていない最先端の装置による測定実験を体験しました。併せて、測定原理の講義や得られたデータから種々のパラメータ値を読み取る演習も行われ、招へい者たちは先端科学技術を学ぶことができました。
本事業は、キャンパスツアーおよび弘前市内の「最勝院五重塔」や「弘前公園(弘前城址)」の見学から始まりました。仏教施設であっても、タイと日本の違いや、弘前の歴史や文化、また移動途中の市内(城下町)の町並みなどにも興味を示していました。これにより、本学教員・補助学生と招へい者たちとが親しくなり、その後の科学プログラムの実施にあたっての円滑なコミュニケーションがとれるようになりました。
科学プログラムについては、まず、電子常磁性共鳴法(ESR、EPR)の原理を解説するセミナーから始まりました。初心者には少し高度な内容も含みましたが、原理から測定で得られたスペクトルの解釈・解析方法までを一通り学んだ後、典型的で簡単な試料の測定のデモンストレーションと、そこで得られたスペクトルを用いて、学んだばかりの手順に従ってスペクトルパラメータの値を求める演習を行いました。
その後、いよいよ招へい者たちが各自の研究テーマに合わせて用意してきた実試料の測定に進みました。それぞれが複数の試料を準備してきたので、全体としてはかなりの時間を要しましたが、測定自体はおおむねスムーズに進行しました。さらに、本学の補助学生の機器操作による測定だけではなく、招へい者自らが測定装置を操作してスペクトルデータを得る体験もしました。招へい者たちは、測定結果についてその場ですぐに議論していたほか、最終的に各自でプレゼンテーション資料にまとめ、結果発表会において全員で議論していました。
また、測定の合間を縫って、理工学研究科長を表敬訪問し、懇談や記念品の交換などが行われました。
プログラム最終日の修了式および送別会では、本学国際連携本部長より招へい者全員に修了証が手渡され、招へい者からは、チェンマイ大学とコンケン大学のグループそれぞれの代表者による謝辞が述べられました。その後、招へい者たちは、グループごとに異なるタイ衣装を身につけて、それぞれの伝統的な音楽に合わせた舞を披露してくれました。両大学の立地の違いのせいか、タイダンスと一括りにできない趣の異なる舞でありました。
来日から帰国までの10日間は大変充実しており、あっという間に感じられました。招へい者に先端技術を紹介し、体験してもらい、今後の研究の発展への寄与が期待されます。それに加えて、 補助学生と招へい者が互いに英語でコミュニケーションをとろうと苦心している様子から、国際語である英語の重要性や伝えようという意思が重要だと、補助学生にとっても意義深いものであったと思われます。