2018年度活動レポート(一般公募コース)第160号
モンゴルと金沢、異なる環境の研究に一緒に取り組む若手ネットワーク
金沢大学からの報告
2018年11月16日から25日、国立モンゴル大学より8名が、さくらサイエンスプログラムにて金沢大学を訪問しました。2017年度に続いて2度目のさくらサイエンスの採択です。
金沢大学とモンゴル国立大学は、モンゴルの内陸部での環境変動問題や、鉱物資源の野天堀などによる汚染問題などに共同で取り組んでおり、今回の参加者のうち半数はこれまで共同研究の現地調査をサポートしてくれた大学院生や学部生でした。環日本海域環境研究センターにおける野外観測サイトでの実習、実験室での機器分析、金沢市企業局のゴミ処理施設、排水処理施設、浄水場の見学、琵琶湖博物館の見学などを実施し、多くの方にご協力いただきました。
野外観測サイト実習は能登半島で実施しました。大陸内部のモンゴルのみなさんにとってやはり海、それも日本海の荒波が注目の的でした。モンゴルにもフブスグル湖など大きな湖があるため、見渡す限りの水平線にはなじみがある人もいたのですが、激しい波は珍しかったようです。また小さな貝が砂浜にびっしりいることも驚きだったようです。
能登では臨海実習施設に宿泊し、日本人学生と一緒に晩ご飯を手作りしました。石川県の誇る「とり野菜」鍋、モンゴルでの調査の際、日本人参加者に体調不良者がでると注文してくれる「モンゴル風チキンスープ」、モンゴルと日本の間に位置する韓国をリスペクトしたのかなぜかキムチ鍋も用意され、みんなで舌鼓をうちおいしくいただきました。
金沢市の企業局の施設見学にいった際には、ゴミ処理場、下水処理場、浄水場すべてにおいて、その過程を利用する発電施設を伴っていることが注目されました。国土が広く人口密度の低いモンゴルでは土地に困っていないため、基本ゴミ処理は埋め立てのみです。しかし日本ではゴミの減量化・リサイクルの徹底がめざされています。見学した学生たちは「やはりモンゴルでも将来を見据えてゴミの減量化に取り組むべきであり、発電やゴミリサイクルで、ぜひ事業を興そう」と夢を語ってくれました。ぜひ実現化してもらいたいです。
琵琶湖博物館では体験型の演示に積極的に参加し学ぶとともに、環境研究成果の蓄積の重要性を学んでいきました。モンゴルで川や湖で異変があると大学に原因を調べてほしいと連絡が来ることがあるそうです。しかし結局通常の状況がどうであるかの観測結果がないために、そもそも何を調べていいのか判断が難しく、かつ調べた内容のうち何が原因で問題が引き起こされるのか、なにもわからないとのことでした。日本では湖やダム湖の環境動態の研究が実施され、多くの湖で博物館施設が設置されて地域の人の学習の場になっています。ぜひモンゴルでもそのような施設を備え研究をすすめてほしいと思います。
プログラムの最後には民族衣装を着て学んだことを発表してくれるとともに、感謝を込めてということで「Sakura Science」と掘った記念の銀の皿をプレゼントしてくれました。また日本の歌(北国の春)を日本語で合唱してくれて日本側の参加者一同とても感動しました。
今回のプログラムでは日本人学生とモンゴル人学生の交流がたいへん活発で若手ネットワークが形成されたことが大きな成果でした。このような機会を得る事を可能にしてくれた本プログラムに心より感謝したいと思います。