2018年度活動レポート(一般公募コース)第141号
フィリピンの大学生・大学院生が先端両生類学とその技術を学ぶ
広島大学からの報告
さくらサイエンスプログラムによって2018年8月5日(日)から8月12日(日)にかけて、フィリピンのミンダナオ島北部に位置するファーザー・サチュアノ・アリオス大学からSanguila教授、Plaza研究員以下、7名の大学院生・学生が両生類研究センター(両生研)を訪問し、セミナー、両生研の見学、実験実習、広島平和資料館などの見学を行いました。
8月6日の午前に、まず両生類研究センター長・荻野先生から歓迎の挨拶があり、その後、世話をする両生研の担当者と訪問者の自己紹介、両生研の施設見学を行いました。両生類研究センターでは、カエルを多数飼育するために、餌として生きたコオロギを飼っていて、この様子を興味深そうに見ていました。
午後から、東洋大学・柏田先生によって、最近問題となっている海洋のプラスチック汚染の問題について講演があり、続いてSanguila教授によるファーザー・サチュアノ・アリオス大学の紹介がありました。その日の夕方に、広島大学学士会館のレストランで歓迎会を行いました。
7日から8日にかけては、カエルの組織からDNAを抽出し、ミトコンドリアの一部の遺伝子配列領域をPCRで増幅して、それを鋳型としてその領域の遺伝子配列を決定するという実験を行いました。
10日に、インターネットを用いて他のカエル種の遺伝子配列情報を取り出し、今回用いたカエルが他のカエルとどのような関係にあるかを分析する系統解析を行うコンピューターを用いた演習を行いました。学生の中には初めてDNA抽出を行なった方もいて、原理などの説明の時には質問などが出て興味深く聞いてくれました。
フィリピンの南部のミンダナオ島では、無尾両生類が多くいるものの、その分類などが進んでいないという現地の事情を踏まえ、ミトコンドリアの遺伝子の配列情報から種を同定したり、系統関係を分析するこの技法を学んでもらう狙いでこの実習を実施し大変好評でした。
系統解析にはコンピューターを使用するので、大学のメデイア情報センターに支援を要請しましたが、空きがありませんでした。それで、来日される学生・院生にどの位の人が自前でコンピューターを持ってきてくれるか問い合わせたところ、全員が持って来ると聞いて安心しました。また、種同定に必要な自然界のカエルのホルモン注射による産卵させる方法や、ネッタイツネガエルを用いた人工授精実験も行いました。
ミトコンドリアの遺伝子の配列情報を知るためには、DNAシークエンサーと言う機械でほぼ1日の時間がかかります。それで、8日に配列決定の機械にサンプルをかけた後、その結果が出るまでの1日を利用して広島平和資料館や原爆ドームを訪問しました。7月の広島の豪雨災害のため、山陽本線が不通だったため公用車で移動しました。資料館では、原爆の悲惨さにみんな驚いていました。
最終日に修了証を渡して空港まで送りました。学生たちは、日本のアニメや食事にすごく関心があって、話をしていて、よく知っているね、と感じました。ラーメン、お好み焼きなど日本食もよく食べてくれました。参加者全員、日本にすごく良い印象を持ってくれて帰国したようなので、このプログラムを行なった責任者としては大変満足しています。