2018年度活動レポート(一般公募コース)第109号
香港科学技術大学理学院の学生が、静岡の超急峻環境科学を学ぶ
静岡大学理学部からの報告
静岡大学理学部では、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2018年8月1日~8日の日程で香港科学技術大学理学院から学部学生8名と事務職員1名を招へいしました。静岡大学理学部は香港科学技術大学理学院と国際交流協定を締結しており、学生の受け入れは今年で3回目です。
静岡大学が所在する静岡県は、100km足らずの距離に日本一高い富士山と日本一深い駿河湾を有する、世界的にも稀な超急峻環境です。これらの地形は現在も変化し続けており、静岡県での暮らしは、地震や火山噴火に備えながら、エネルギ―や生物生産といった山・里・海からの恵みを産業に活用し、更に、頑強な交通インフラで日本の大動脈を支えています。これらを可能にしている新旧様々な科学技術を「超急峻環境科学」と称し、6つの実習で学びました。昨年は台風の影響で実施できなかった調査船を使った駿河湾での観測実習も本年は無事実施できました。
駿河湾について学ぶ
来日翌日の8月2日および3日は、2班に分かれてそれぞれ駿河湾での海洋調査実習および東海大学海洋科学博物館の見学をしました。東海大学海洋科学博物館には駿河湾の多様な生物が展示されており、調査船での実習と合わせて駿河湾に生息する深海魚や黒潮に乗って来た多様な熱帯魚について学習してもらいました。海洋実習では、今年は台風の直撃はなかったものの波は高く、ほとんどの参加者が船酔いしたそうです。
富士山と防災について学ぶ
8月4日に静岡県地震防災センターを訪問し、地震の映像や地震体験、液状化実験などを通して防災対策を学びました。翌8月5日は静岡大学理学部創造科学コースの1年生と共に富士山の新5合目から6合目まで登り、宝永火口などを観察しました。周囲を含めた地形の起伏や足元に転がっている石の様子から富士山の成り立ちがわかることを学び、富士山の地質学的な魅力と共に、前日の地震防災との関連を学びました。
産業について学ぶ
8月6日に大井川鐵道に乗り、急峻地域でのインフラについて学びました。大井川鐵道は井川ダム建設のために設置された鉄道であり、急峻路線である井川線は日本唯一のアプト式ラック鉄道として知られています。また、大井川本線は日本で初めて蒸気機関車の動態保存を始めたことで有名です。交通インフラの体験や、過疎化地域での鉄道のあり方を実地体験してもらうため、アプト式ラック鉄道への乗車だけでなく、集客のために企画されている機関車トーマス号も見学し、実際の観光客の熱気を肌で感じてもらいました。
高山植物について学ぶ
8月7日に、山里の自然と暮らしを学ぶために南アルプスのふもとにある梅ヶ島で植生観察を行いました。当初予定していた場所が土砂崩れのため通行止めとなっていましたが、近くの滝へと変更し、むしろ喜ばれました。わさび田発祥の地でわさび料理も楽しみました。