2018年度活動レポート(一般公募コース)第098号
アジア地域における感染症疫学若手研究者交流事業
聖路加国際大学&国立感染症研究所からの報告
アジア地域は多くの感染症が流行するホットゾーンですが、感染症研究者のネットワークを構築し、適切な情報共有を行うことは、各国の感染症対策に大きな効力を発揮します。また、日本は戦後の衛生状態が悪化した混乱期から、感染症を克服してきた歴史があり、その知見や経験は、発展著しいアジア地域の国々において重要な参考になると思われます。
本事業では、アジア諸国において、感染症疫学の分野で研究を行い、感染症対策に当たっている若手研究者を日本に招へいし、日本の実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program:FETP)に所属する若手研究者等とともにシンポジウム及びワークショップに参加し、双方の交流を深めることを目的として聖路加国際大学並びに国立感染症研究所が共同で2018年6月28日~7月6日の9日間実施しました。今回はタイ、モンゴル、ミャンマー、台湾から計8名のFETP研修生が参加しました。
1日目は、聖路加国際大学病院にて、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長による特別講演が行われ、感染症対策におけるアジア各国の連携の必要性、重要性について学びました。その後、日本を含む各地域における感染症に関する課題や対策についてFETP研修生が発表しました。
2日目は、聖路加国際大学Gilmour教授よりHIVを例にした感染症数理モデルを紹介していただきました。続いて聖路加国際病院における我が国の最先端の検査診断技術や治療を見学しました。その後、日本の感染症対策の現場として川崎地方衛生研究所を見学しました。
後半は感染研に舞台を移し、米国エモリー大学教授Jose Binongo先生による生物統計学セミナーを開催しました。講義では、生物統計学に基づく分析手法についての紹介や解説、また実際サンプルデータを用いて演習問題を解きながら解析方法について学びました。
本事業期間中、講義以外の時間においても各地域の文化の紹介や、日本のFETPによる書道の実演と歓迎会が行われるなど様々な交流が行われました。セミナー中の週末には日本科学未来館を見学し、感染症分野を含む我が国の優れた科学技術を実際に体験しました。
本事業を通して、若手研究者同士が様々な分野において意見交換やそれぞれの経験を共有しました。その交流を通じて形成されたネットワークにより、共同研究や情報共有が促進され我が国を含め参加各国、地域における感染症対策の根幹をなすことが期待されます。