2018年度活動レポート(一般公募コース)第091号
医薬品合成を指向したグリーンな有機合成反応に関するPBL型研修プログラムを終えて
大阪工業大学工学部応用化学科からの報告
8月19日(日)から25日(土)までの7日間、さくらサイエンスプログラムからの支援を受けて、台湾の国立台湾科技大学 化学工学科(Taiwan Tech)から10名の学生を大阪工業大学工学部応用化学科(OIT)に招へいしました。
Taiwan TechおよびOITの学生諸君が、「医薬品合成を指向したグリーンな有機合成反応に関するPBL型研修プログラム」に取り組みました。
プログラム初日のオリエンテーションでは、開会式、スケジュールの確認、自己紹介、グループ分け、大学研究室、大阪の見どころなどが紹介され、これから始まるプログラム概要の説明をしました。
予め学生さんが調べた「グリーンケミストリー」についてのプレゼンテーションを行い、引き続き、教員から「環境に優しい触媒」について、講義を行いました。「理想的な環境触媒反応とはどのようなものか」について、参加者全員で議論しました。中でも、水媒体中で鈴木カップリング(炭素-炭素結合)反応が効率よく稼働する「環境に優しい触媒の開発」が重要であることが示唆されました。日本の学生はディスカッションやディベートをする機会がそれほどなく、自分の意見を述べるのは苦手ですが、それでも頑張って英語で説明していました。
実習では、「パラジウム(Pd)ナノ粒子をポリスチレン(PS) 粒子の担体上に固定化したPd-PS触媒を合成し、水媒体中での鈴木カップリング反応」を体験する課題に取り組みました。具体的には、炭酸カリウムまたは水素化ホウ素ナトリウムを異なる還元剤試薬に用いて、2種類のPd-PS触媒を合成し、これらを用いて鈴木カップリング反応を行いました。これらの結果から、Pdナノ粒子のサイズが触媒活性に大きな影響を及ぼすことを確認し、金属ナノ粒子の粒子サイズと反応活性との関連性について、さらにディスカッションを行いました。
実験の合間には、京都の島津製作所 創業記念資料館を訪問しました。島津製作所で製造されてきた医療用機器、分析用機器の歴史について学び、また、理科機器や理科の玩具を実際に手に取って体験しました。参加者全員が対応してくれたスタッフの説明を熱心に聞いていました。その後、金閣寺と清水寺を訪れました。観光客でにぎわっており、また、非常に強い日差しの中、学生さんたちは元気に京都の街を一緒に散策し、さらに親睦を深めていました。異文化交流は学生にとって大変刺激的であったことは間違いありません。
また、「カップヌードルミュージアム 大阪池田」も訪問しました。体験型の食育施設となっており、食の文化について学びました。そこでは参加者が、世界でひとつだけのオリジナル「カップヌードル」を作ることができる体験実習を行い、楽しみました。
最終日は、実習の成果ならびに大阪で体験したことについて、英語で発表しました。学生さんたちは緊張した様子でしたが、しっかりと英語でのプレゼンテーションを行っていました。台湾の学生さんからは、美味な日本食や日本文化が体験できたことを喜ぶコメント、そして何より、「また日本に戻ってきたい!」、「日本で就職したい」など、喜ばしい意見も寄せられました。
一方、英語によるコミュニケーション能力を更に身に付ける必要があると感じ、自分の考えを思うように英語で表現できず、台湾の学生と差があることを認識した日本人の学生もいました。学生さん自らが、身をもって体得できたことは、教員としてPBLプロジェクトをやった甲斐があったのではないかと思います。この貴重な経験を糧にして、双方の学生さんがグローバル社会で活躍できる素養を、さらに身に着けていくことを期待します。
最後になりますが、PBL型研修プログラムを遂行するにあたり、多大なるご支援を賜りました「さくらサイエンスプログラム」に心より感謝申し上げます。