2018年度活動レポート(一般公募コース)第069号
核融合プラズマ加熱用中性粒子入射装置を学ぶ日中若手人材交流プログラム
核融合科学研究所 助教 池田勝則さんからの報告
平成30年9月10日から15日の6日間、さくらサイエンスプログラムのご支援により中国安徽省の中国科学技術大学の大学院生4名、引率の教員1名の5名を自然科学研究機構核融合科学研究所に招へいし、科学技術体験活動を行いました。引率のLiang准教授は中国技術大学で教鞭をとり、同時に安徽省合肥市にある中国科学院プラズマ物理研究所(ASIPP)で中性粒子入射加熱装置(NBI)の研究開発に従事する新進気鋭の若手研究者です。
Liang教授の指導下で4名の大学院生はASIPPで実践的な研究活動を行う将来有望な大学院生です。核融合科学研究所のNBIグループはASIPPのグループと日中事業を通じて共同研究活動を継続実施しており、今回は若手研究者の交流と共同研究の持続的な発展を推進する機会として企画しました。
本プログラムでは、プラズマ核融合を実現するために必要なプラズマ加熱装置の一つであるNBIについて核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)で稼働中の機器を教材として、加熱装置に必要な物理的・工学的知識について学ぶことを目的としています。
2日目にはLHDとNBIの施設見学を行いました。LHDは超伝導コイルを用いたヘリカル型核融合実験装置で10keV以上のイオン温度のプラズマの生成を目標に実験を行っています。NBIは高エネルギー(180keV)の水素中性粒子をプラズマ中に入射し、プラズマ内部のイオンと荷電交換することでプラズマ温度を上昇させます。使用する水素負イオン源は日本の独自技術です。ビームラインの長さは13mと巨大で、見学者一同はLHDとNBIの大きさに見上げるように見学を行っていました。
引き続きNBI開発試験装置の見学を行いました。開発試験装置では約半分のサイズのイオン源を用いて負イオン源内部のプラズマ温度や密度等を計測し、実機イオン源では出来ない負イオンの輸送に関する研究を行っています。また開発試験装置では国内外の共同研究活動と大学院生の教育活動を積極的に行っています。中国科学技術大学の大学院生のうち修士課程の1名は総合研究大学院大学の留学制度に興味をもち、日本への留学や研究活動の状況について質問をしていました。総合研究大学院大学への留学制度については当研究所の木崎助教から追加で詳細な説明を行っています。3日目と4日目はNBI装置の工学的テーマについて話題を絞り講義と実技指導を行いました。
5日目には名古屋大学に移動し、プラズマ関連の研究室の見学を行いました。大野研究室では直線型のプラズマ装置を用いたダイバータ試験装置を見学し研究状況について解説を受けました。
また豊田研究室では核融合研究から少し離れ、半導体用プラズマプロセス分野のイオン源の研究開発について解説を受けました。プラズマの産業分野への応用は日進月歩であり、大学院生の活動と研究室の活気に感銘を受けていました。
招へい者は名古屋市内で一泊し、翌日の飛行機で無事帰国しております。今回の招へい事業で日本と中国の若手研究者の交流がより一層活発になりました。機会を与えてくださった「さくらサイエンスプログラム」に御礼申し上げます。