2018年度活動レポート(一般公募コース)第053号
アジア工科大学の大学院生10名が超小型衛星搭載機器の設計・製作を体験
東京理科大学理工学部電気電子情報工学科
教授 木村真一さんからの報告
7月23日から8月1日までの10日間、「さくらサイエンスプログラム」の支援により、タイ・アジア工科大学院から教員1名、大学院学生10名が東京理科大学電気電子情報工学科木村研究室に滞在して、民生用電子デバイスを活用した超小型衛星搭載機器の設計・製作体験に参加しました。
木村研究室では、民生用の電子デバイスを活用して、低コストで高機能な宇宙機器を数多く開発しており、「IKAROS」、「はやぶさ2」など様々なミッションにおいて活用されています。このプログラムでは、搭載機器の製作と環境試験などを実際に体験すると共に、グループに分かれて模擬衛星CANSATのミッションの設計を行うことで、宇宙開発について実践的に学ぶことを目的としています。
参加者はまず、木村研究室が開発した宇宙カメラ開発キットを用いて、それぞれ自分の宇宙用カメラを製作しました。その製作過程で、宇宙機器を開発製造する上で重要な点について体験的に学びました。ちなみに、この宇宙カメラ開発キットはIKAROSに搭載されたカメラと基本的に同じ設計で、宇宙用に実績のある部品で構成されているので、将来宇宙機に搭載して宇宙空間で動作させることができます。
次に、参加者それぞれが製作した宇宙用カメラが、宇宙環境で動作することを確認するために、熱真空試験・温度試験などの環境試験を実施しました。軌道上での環境を再現した、環境試験を自分たちで実施することで、参加者の宇宙機器開発への理解と関心が一層高まったように感じました。
7月28日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)にご協力頂き、JAXA筑波宇宙センター等の宇宙関連設備を見学しました。筑波宇宙センターでは、通常では見学することができない「きぼう運用管制施設」も見学させて頂き、非常に貴重な体験になったと思われます。
プログラムの後半では、参加者が2グループにわかれ、グループ毎に模擬衛星CANSATのシステム設計に取り組みました。検討内容は、7月31日に、それぞれプレゼンテーションを行い、1チームは落下課程で大気の情報を収集するミッション、もう1チームはタイで伝統的に行われている民間ロケットBangfaiの飛行軌跡データ取得ミッションという、大変ユニークなミッション提案が発表されました。この設計過程で、システムデザインなどについて実践的に学ぶことができたと思います。
アジア工科大学の所在地はタイですが、国際大学であり、今回の参加者はタイ人3名、スリランカ人4名、バングラデシュ人1名、ネパール人1名と国籍、文化、宗教など様々でした。また今回の参加者は交流に非常に積極的で、受け入れ側の学生にとっても、国際交流の貴重な経験となりました。また、参加者からは、東京理科大学博士課程への進学の希望も多く頂いており、今後様々な交流に発展していく事が期待されます。このような交流のきっかけを作って頂いた「さくらサイエンスプログラム」に深く感謝いたします。