2018年度 活動レポート 第37号:金沢大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第037号

「漢方生薬の資源と品質」をテーマに日中の教員と学生が研究交流をしました

金沢大学医薬保健研究域薬学系
准教授 佐々木陽平さんからの報告

さくらサイエンスプログラムの支援により、中国の北京大学、河南中医薬大学、瀋陽薬科大学、青海省蔵医薬学会の4研究機関からの教員および学生(引率者を含めて11名)が 2018年6月17日から10日間の日程で金沢大学に滞在し、金沢大学の私の研究室員と一緒に研究交流計画を実施しました。

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薬草収穫作業

金沢大学とこれらの4研究機関との交流はこれまでは個別の交流が主でした。今回、日中の教員と学生が一堂に会して漢方生薬の資源と品質に関する情報共有する機会が実現しました。日本では漢方薬の原料である生薬(しょうやく)の多くを中国産に依存しています。しかし中国にも、いつまでも日本に供給し続ける豊富な生薬資源がある訳ではありません。天然資源である生薬を持続的に利用するためには日中双方で問題意識を共有し、品質について考えなければなりません。今回の中国の4機関はそれぞれ地理的な面、そして研究面でも特徴がある施設です。長い生薬生産の歴史がある河南省、野生資源に依存する青海省、半野生状態での栽培を試みている遼寧省(瀋陽薬科大学)、生薬規格の標準化を進める北京大学、と生薬資源を議論するために最適な4機関です。

金沢大学での研究活動は栽培試験場がある薬用植物園と解析設備がある実験室で実施しました。晴天に恵まれた心地よい気候のもと、薬草収穫の作業を熱心に行いました。中国の皆さんはこれまで実際に生きた植物に触れる作業の機会は少なかったようで、とても貴重な体験だったようです。

写真2
薬草の選別、加工作業

薬用植物園で収穫した植物は実験室内での解析作業に使用しました。金沢大学の学生と一緒に葉からゲノムDNA を抽出し、DNA 配列の増幅と解析、そして分子系統学的解析を行いました。中国の皆さんは一生懸命に解説を聞きながら注意深く操作を行いました。

写真3
実験室での風景、葉から DNA の抽出作業

実験の合間には、他施設見学のプログラムを企画しました。富山県薬用植物指導センターは全国でも数少ない薬草生産を指導できる富山県の施設です。また富山大学和漢医薬学総合研究所民族薬物資料館は日本最大の生薬の収蔵量を誇る施設です。小松かつ子教授の解説を熱心に聞いていました。さらに生薬を利用する、という観点から金沢大学附属病院薬剤部、そして漢方医学科の小川恵子先生の案内で実際の診断を見学しました。

日本の生薬事情を理解していただいた後、プログラムの後半では相互理解と課題の共有に向けて議論を行いました。22-24日は金沢大学で開催した「加賀能登の薬草シンポジウム」に皆さん参加していただきました。講演会では「日中交流企画」というセッションにおいて、中国各地の生薬事情を解説していただきました。翌日の野外観察会では、金沢大学キャンパスの里山を散策し野生薬草資源を調査しました。

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薬草シンポジウムで発表する中国4研究機関の皆さん

最終日は中国の皆さんと金沢大学の研究室メンバーで合同セミナーを行いました。生薬に関する問題点を議論するとともに交流プログラムの感想などを発表していただきました。金沢大学の国嶋崇隆薬学系長による修了式を経て、全プログラムを終了しました。

私は平成29年にも河南中医薬大学との交流計画をサイエンスプランに採択していただいています。その計画を発展させて今回の4機関の交流計画となりました。中国の皆さんが滞在を終えた直後、私は学生と中国青海省と北京大学を訪問しました。日本に来ていた皆さんが今度は私達を歓迎してくださり、今後の共同研究の継続を改めて確認し合いました。これらの成果はさくらサイエンスプログラムに基づくものであり、採択いただいたことに対し改めて感謝致します。

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修了式にて