2018年度 活動レポート 第13号:高エネルギー加速器研究機構

2018年度活動レポート(一般公募コース)第013号

華中科技大学の大学院生が最先端加速器技術を体験

高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設
教授 内藤富士雄さんからの報告

平成30年7月4日(水)~12日(木)の9日間、さくらサイエンスプログラムにより、華中科技大学(HUST)の大学院生を中心とした11名を高エネルギー加速器研究機構(KEK)に招へいしました。今年は交流計画の2年目に当たり、下記プログラムにあるような日程で講義・実習・施設見学を、KEKつくばキャンパス・東海キャンパス両方で実施しています。

KEKは稼働中の加速器施設を数多く有しており、世界でも最先端の加速器研究施設であることから、昨年と同様、最先端加速器技術を身近に体験できるようなプログラムを編成しました。一方、昨年と少し違った点では、講師・実習担当教官・見学引率者を比較的若い研究者にお願いし、苦労しながらも最先端で活躍している経験を参加者に伝えることを狙ったプログラムにしました。

前半はKEKつくばキャンパスに於いて、加速器基礎の講義、グループ実習、加速器施設の見学です。講義は昨年と同様、活発な質疑が学生達から挙がっていました。講師の応答も実経験を踏まえた解説をして頂き、学生にとっても理論が実際にどのように使われているか、興味深い講義であったと思います。

2日目の午後は3グループに分かれて実習を行っています。後日行われた学生達による発表で、この時の実習を題材にする学生が数多くいました。少人数で質疑応答が容易であったためか、深い理解が得られたものと考えられます。

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2日目 講義の様子

3日目は、昨日の基礎講義から発展した実際の加速器(J-PARC)を題材にした解説でした。基礎講義からの繋がりを明確にしたもので、大学等での講義内容が現実ではどう活用されているのかを垣間見ることができたと考えます。その後は4つの加速器施設(LINAC・PF・cERL・STF)と検出器(BELL-II)の見学です。つくばで稼働中の加速器関連施設からピックアップして、身近に加速器技術を見学できるツアーにしています。巨大さ・種類の多さに圧倒された同時に、それぞれが持つ意味・意義を学習したことと思います。

写真2
3日目 施設見学の様子(PF)

後半は東海キャンパスで、J-PARC加速器の解説講義をセットにした施設見学、モニター装置の実習、さらには学生達による発表会を実施しました。LINAC講義+施設見学では中国人の若い研究者に講師をお願いしました。年代の近い、自分たちの先輩が、第一線で活躍しているのを肌で感じたことと考えます。

MRの講義+施設見学では、夏期メンテナンス期間中ということもあり、通常では見学できない、トンネル内にあるMR加速器装置の見学をツアーに組み込みました。学生達による尽きることのない質問が浴びせられ、とても有意義だったと記憶しています。

写真3
7日目 施設見学の様子(MR)

モニター装置の実習は、ビーム電流を測定するCT(Current Transformer)設計が題材でした。電磁場の相互作用をきちんと理解させるもので、モニター設計だけでなく電磁石設計にも通じるものでした。最終日には学生達による、今回の講義・見学・実習等で印象に残ったものを紹介するという発表会を開催しました。全員が科学的な題材を主とした発表を行っており、来日した学生達のレベル・意識の高さを見ることができました。

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7日目 実習の様子

成功裡に終了しましたが、課題もあったと考えます。特に講義・見学・実習の量が多いという指摘がありました。初めて経験することばかりなのに加え、移動も多く、精神的にも肉体的にも疲れてしまったように見受けられます。昼食後の休憩時間に仮眠を取る生徒が多く、後半になるほど活発さが減ってきたように感じました。早めに切り上げる日を設定するなどの工夫が必要と考えられ、来年度のプログラムに反映させたいと考えています。

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8日目 学生による発表