2017年度 活動レポート 第430号:京都大学大学院理学研究科附属天文台

2017年度活動レポート(一般公募コース)第430号

将来の地上大型天体望遠鏡のための技術と装置開発を学ぶ日中交流

京都大学大学院理学研究科・附属天文台からの報告

京都大学では、今回「将来の地上大型天体望遠鏡のための技術と装置開発」を主テーマとし、南京天文光学技術研究所を中心とするメンバー11名を、2018年3月3日~9日の期間、日本に招へいし、研修ツアーを実施しました。

中国では、現在天体観測装置の開発分野において、複数の大型望遠鏡の研究・開発が進められています。一方、日本国内では、国立天文台や京都大学などを中心に、各種大型望遠鏡の建設や、特徴的な観測装置の開発に成功してきています。今回、中国の将来の大型望遠鏡の開発を担う若手研究者・技術者を招へいして、これら日本の技術を概観してもらうことで、それを今後の留学や国際共同研究開発の推進への契機とし、日中両国の科学技術の発展に結び付けることを目指して、この事業を実施しました。

今回の研修ツアーでは、京都大学花山天文台、国立天文台三鷹キャンパス、京都大学飛騨天文台、ナガセインテグレックス社、国立天文台岡山天体物理観測所、京都大学岡山天文台 を訪問して回りました。

まず、京都大学花山天文台において、今回のツアーに関する詳細スケジュールの説明や各訪問先に関する情報の共有を行なった後、花山天文台で行なわれている教育的天体観測やアウトリーチ活動の概要を視察してもらいました。

写真1
花山天文台本館前での、今回の参加者の集合写真

次に訪れた国立天文台は、1999年に8m級の夜間用天体望遠鏡をハワイに建設し、それに搭載する各種観測装置の開発の経験もあり、近年は、さらに30m級と言う超大口径天体望遠鏡の建設準備も進めています。国立天文台三鷹キャンパスでは、これらの装置開発や技術に関する講義や、中国側参加者による、中国の夜間用大型天体望遠鏡に関する技術開発の近況に関する講演を実施し、その後、実際に各種装置開発が行われている先端技術センター内の見学を実施させて頂きました。

写真2
国立天文台三鷹キャンパスにおける、
30m望遠鏡計画に関する講義の様子
写真3
同三鷹キャンパスの先端技術センター内の見学の様子

4日目に訪れてもらった京都大学飛騨天文台は、日本の地上太陽観測の中心的存在となっている施設です。国内唯一の太陽観測用補償光学装置や、液晶遅延素子を用いた波長可変の狭帯域光学フィルタの視察、世界最高性能の太陽分光器を用いた多波長偏光分光観測装置などの視察をしてもらったり、各観測装置開発者とのセミナーを実施したりしました。

写真4
飛騨天文台における太陽観測望遠鏡視察の様子

一方、京都大学では、夜間用の口径3.8m天体望遠鏡を岡山に建設したばかりで、それに用いる反射鏡については、世界的にも珍しい、研削による分割鏡の製作技術を培いました。そこで、5日目には、その反射鏡を共同開発したナガセインテグレックス社を訪問し、鏡の研削装置を視察してもらい、6~7日目には、岡山天文台において、3.8m望遠鏡における技術開発の概要や、それを用いてどのような天体観測を実施して行くのかについて、さらに中国側では夜間天体観測のために、どのような装置の開発が行われているのかについて、セミナーを実施すると共に、3.8m望遠鏡の実物を間近に見学してもらいました。さらには、岡山天文台に隣接する、国立天文台岡山天体物理観測所の御協力を得て、当観測所の、多様な目的を持った大小様々な天体望遠鏡の視察の実施も行わせて頂くことができました。

写真5
ナガセインテグレックス社における鏡研削装置の視察の様子
写真6
岡山天文台におけるセミナーの様子

写真7
3.8m天体望遠鏡前での集合写真
写真8
岡山天体物理観測所が所有する望遠鏡の視察の様子

今回の研修ツアーにおいては、各訪問先の多くの御担当者の方々の御好意により、ボランティア、もしくは本業の一環として、講義や見学解説を行なって頂くことができ、無事に大変充実した研修内容を実現することができました。参加者からは、研究員として再来日を希望する声、装置開発に関する共同研究・共同開発を希望する声が寄せられました。