2017年度活動レポート(一般公募コース)第415号
タイの大学院生が日本の水産業とそれを支える科学技術を体験する
東京海洋大学からの報告
東京海洋大学食品生産科学科ではタイ王国・チュラロンコーン大学理学部食品テクノロジー学科と長らく交流を続けており、特に2012年からはタイと日本で交互にジョイントセミナーを開催しています。第6回となる今回は日本での開催となり、一昨年に続きさくらサイエンスプログラムの助成を受けることができ、お陰様で充実したセミナーとなりました。
2018年1月28日から2月3日の7日間、10名の大学院生および大学生、1名の教員を招へいしました。初日と、最後の2日間は品川の東京海洋大学にて見学や実習を行いましたが、メインイベントは1月29日から2月1日に掛けて行われた、気仙沼、石巻視察旅行です。気仙沼、石巻は元々日本有数の大漁港ですが、東日本大震災で甚大な被害を受け、その復興の過程で最先端の科学技術が取り入れられています。タイも水産業が盛んな国なので、日本の水産業を深く知ってもらうことは意義あることと考えて企画しました。
気仙沼(1月29日~1月30日)
朝から新幹線に乗って気仙沼に向かいました。前日の東京も積雪があり、タイの学生達は初めてみる雪に興奮気味でしたが、気仙沼は積雪量も寒さも段違いでした。この日は、伝統的な製法で日本酒を製造する男山本店を見学しました。
翌日は、朝6時に集合して魚市場を見学しました。あいにくこの日は主要な水揚げが無かったのですが、停泊中の漁船を見学して、メカジキの延縄漁の説明を聞きました。
続いて、足利本店のサメ加工場と、市場の製氷工場で最新鋭の製氷プラントを見学しました。倉庫には出来上がった角氷が美しく積まれており、みな記念写真に興じていました。
午後からはミニシンポジウムを開催し、タイと日本の学生が英語で自分の研究について発表しました。その夜は懇親会を開き、気仙沼の海の幸を楽しみながら、学生同士もすっかり打ち解けました。
石巻(1月31日~2月1日)
朝、気仙沼を出発して石巻に向かいました。漁港では、ちょうどタイミングよくサバの水揚げを見学することができ、電子せりの施設も見学しました。放射線測定装置も見学しました。サバのような多獲魚でも全数検査を行い、安全を保障していることに驚嘆するとともに、原発事故が無ければこのような装置も必要なかったかと思うと複雑な気持ちになりました。
次いで見学した盛信冷凍庫の冷凍サバ工場は、大量のサバを自動で整列、選別、箱詰めして凍結まで行う工場で、その規模に圧倒されました。このサバはタイにも多く輸出されているそうで、タイの学生達も身近な食品が先進的な設備で作られている様を興味深く見ていました。
市場に敷設のフィッシュミール工場と排水処理場も見学し、ゼロエミッションについて学んだ後、最後は木の屋石巻水産のサバ缶詰工場を見学しました。試食もさせて頂き、生まれて初めての雪遊びに興じる学生も居ました。
末筆ながら、今回の視察旅行に当たって大きなご助力を頂いた、東京海洋大学三陸サテライトの小山様、小松様、石巻市産業部水産課の冨山様に厚くお礼を申し上げます。