2017年度活動レポート(一般公募コース)第409号
パキスタンの若者が鹿児島の自然と科学技術の進歩を学ぶ
鹿児島大学理学部 ハフィーズ ウル レマン助教からの報告
平成30年2月18日~27日に、さくらサイエンスプログラムの支援でパキスタンから11名を鹿児島大学理学部へ招へいしまた。
1日目
オリエンテーションの後、「鹿児島の自然災害や防災について(小林励詞准教授)」「鹿児島の自然・地質学的特長(ハフィーズ助教)」の講義を行いました。教育支援センターの機器分析施設を訪問し、施設長の澤田剛准教授より主な機器分析装置の利用状況について説明を聞きました。
2日目
鹿児島市河川浄水場施設の見学を行い、水質浄化システム等について学びました。施設見学の前施設副場長の満園氏による、「川の水を飲料水にするための仕組みや浄化プロセス、水質を保つための様々な化学成分同時分析」などについての講義を受け、招へい者から2名が代表で水質浄化の実験を体験しました。午後には霧島錦江湾国立公園の活火山の桜島を訪れ、井村隆介准教授による「火山活動の歴史、防災取り組みについて」の講義を受けました。
3日目
鹿児島県伊佐市の、世界でトップクラスの金の含有量を誇る菱刈鉱山を視察し、「地質学的特徴(珪化作用・金の形成)および金の採集方法」について鉱山探査課副課長の瀬戸氏による講義を受け、鉱山見学や周辺にある加久藤火砕流の溶結凝灰岩が形成した曽木の滝を見学しました。
4日目
枕崎市の春日鉱山を訪問し、「金の形成プロセス」について春日鉱山社長の品川氏による講義を受け、金を含む岩石の観察を行うとともに、構造解析に用いる定方位岩石試料の採り方を学びました。春日鉱山は露天掘りで稼働中あり、鉱体が非常に不均質なものであることが現場で確認できます。これは菱刈の場合とは異なる貴重な体験となりました。また、宿市の山川地熱発電所の視察も行い、施設長の渡辺様による「地熱を使って発電する方法や電気の使用状況」についての講義を受けました。
5日目
えびの高原にて霧島連山の火山活動史および南九州の地質学的背景について学んだ後、霧島市にある縄文時代(約9500年前)の国指定史跡である「上野原縄文の森公園」を訪問し、日本の先史時代について学習しました。
6日目
鹿児島市七ツ島メガソーラー発電所を訪れ、太陽光発電の最新情報・技術の現状およびリアルタイム発電量のモニタリング状況を見学しました。その後、明治の産業革命遺産として世界文化遺産に指定された鹿児島市内の仙巌園を訪れ、尚古集成館、反射炉跡などを見学しました。
7日目
鹿児島市立科学館を訪問し、資料の展示方法や簡単な実験なども体験しました。
8日目
参加者全員が研修で得た経験などをレポートにまとめ、口頭発表を行いました。発表終了後に理学部長の蔵脇純一教授による講評を受け「さくらサイエンス修了証書」が授与されました。その後、招へい者および鹿児島大学の関係者(学生を含む)で懇親会を行い、参加者間で交流を深めました。
9日目
関西空港へ移動、帰国しました。
今回、補助者として参加していた日本人学生は、プログラムの進行とともに徐々に英語による会話が増え、懇親会では積極的に英語でコミュニケーションを取っていました。彼らにとって良い経験になったことと思われます。また、招へい者が体験した自然環境条件、防災技術、資源開発技術、環境保全技術などが、彼ら自身の学業に資することとともに、近い将来、彼らがパキスタンの発展に貢献する人材になることを期待します。
最後に、11名を招へいする機会を与えてくださったさくらサイエンスプログラム事業へ謝意を表するとともに、申請から実現に至るまで様々なご協力をいただいたJSTの方々、鹿児島大学の教員、事務職員、学生に深く感謝いたします。今回の事業を切掛として、招へい者と鹿児島大学の学生・教員間の交流が進展し、延いては両国の友好関係の構築に繋がること、そして、招へい者の日本への留学、あるいは日本の研究者との共同研究が実現することを期待します。