2017年度活動レポート(一般公募コース)第396号
数理科学と科学技術分野に関する日中研究交流と異文化交流
島根大学からの報告
2017年9月15日から22日の間、「さくらサイエンスプログラム」の支援により、東北師範大学数学与統計学院の大学院生(碩士課程)10名と国際合作与交流処の職員1名を島根大学に招へいしました(実施主担当者:杉江実郎教授)。
中華人民共和国の教育部が主管する東北師範大学は中国の数ある教育系大学の中で、トップ3に入る中国の国家重点大学であり、中国政府が教育・研究・管理の各方面で先進レベルにあると位置付ける「211プロジェクト」の対象校に指定されています。名称に「師範」とあるように、教師人材の育成において高く評価されていますが、現在、教育学部以外に経済学院、文学院、政法学院などの文化系学部や数学与統計学院、信息科学与技術学院、物理学院、化学学院、環境学院などの理工系学部を有する総合大学として発展しています(計23学部)。
島根大学と東北師範大学は2012年に大学間交流協定を締結した。締結以前からも研究者間の交流がありましたが、締結後はさらに活発な研究・教育交流を積み上げてきました。毎年、交換留学生以外に数名の東北師範大学数学与統計学院の教員や学生が島根大学を訪れ、島根大学からも短期(約1週間)ではありますが、10名程の教員や学生が東北師範大学を訪問してきました。その成果が実って、2016年9月末には本学初のダブル・ディグリープログラムが締結され、2017年4月から東北師範大学数学与統計学院の碩士課程生2名が島根大学総合理工学研究科の博士前期課程に入学しました。このような学生間交流・研究交流の実績の下、今回の「さくらサイエンスプログラム」が実施されました。
本プログラムの目的は、学業成績によって厳選した数学与統計学院の優秀な大学院生と島根大学大学院総合理工学研究科数理科学専攻の博士前期課程生や博士後期課程生の大学院生が、学生主体の研究会「日中合同ワークショップ」を開催し、自身の研究内容や得られた成果の発表を通じて研究交流を促進すること、そして、島根大学数学科の教員数名が本研究会で発表した学生たちを研究指導することにより、将来の数理科学分野における日本と中国の研究交流に貢献できる人材を育成することです。
具体的な内容とその趣旨は以下の通りです。
今回の「さくらサイエンスプログラム」の支援によって、来日した東北師範大学の大学院生のほとんどは海外旅行をした経験さえなかったため、先ずはパスポートの申請から始めなければなりませんでした。そのため、送り出し機関である東北師範大学の指導教員や国際合作与交流処の職員に、いろいろな指導を受けてきました。
また、大学院で学習・研究してきた内容を精査し、何回も研究発表の練習を重ねて渡航準備を整えてきました。この努力は各自を大きく成長させたことだろうと思われます。よく練習した成果が実り、島根大学や大阪府立大学で立派に研究発表することができました。
発表後に質疑応答するという経験を通して、自分の強いところと弱いところを意識できるとともに、研究の専門分野が近い同世代の日本人青年と交流することで多くのことを学んだと思われます。さらに、日本の科学技術や生活・文化・伝統の一端に接した経験は、今後の人生にとって、良い思い出となります。その経験や思い出が再来日の契機となり、ひいては島根県や日本各地で仕事や研究をすることに繋がることが期待できます。
東北師範大学の大学院生は、今回の来日に際してお世話になった島根大学の各部局の教職員に感謝の意をつたえるために、表敬訪問を行いました。
今回の招へい学生のうち、2名は平成30年4月から一年間、ダブル・ディグリープログラム生として島根大学に留学することが決定しています。また、彼らは帰国後、東北師範大学数学与統計学院の後輩たちに「さくらサイエンスプログラム」の活動報告を行い、それを聴いていた学生の中から、島根大学と東北師範大学のダブル・ディグリープログラムの受験を希望する者も現れました。
本プログラム実施期間中に、東北師範大学の大学院生だけではなく、彼らを迎えきめ細かな世話をしてきた島根大学の学生もその交流を通して、いろいろな面で成長できたものと感じました。また、招へい学生たちは全員、日本の科学技術や生活・文化・伝統に対する理解も深まったことは確実です。さらに、目的の一つであったダブル・ディグリープログラムを通して、再来日する学生が現れたという波及効果もあり、本「さくらサイエンスプログラム」は大成功であったと言っても良いのではないでしょうか。