2017年度活動レポート(一般公募コース)第393号
日中連携による新繊維産業創出人材の育成
群馬大学からの報告
今年のプログラムのスタートは、かなりきわどいものでした。2018年1月22日から23日未明にかけて、関東地方を中心に大雪となりました。この影響で、成田空港では滑走路が閉鎖され、約一万人が空港で一晩を過ごすことになりました。大連工業大学の一行は、まさにこの渦中にいました。大連発13:10のNH904便は、雪が激しくなる前に何とか成田空港に到着できたものの、飛行機から降りられたのは夜遅くなってからで、空港で夜を明かすことになったのです。
しかし、一行は日本の良いところを感じる貴重な経験をしました。空港のスタッフが寝袋を全員に無料で配ってくれたおかげで、寒い思いをせずに眠ることができました。また、翌日に電車に乗った時、列車は非常に混雑していたにもかかわらず、乗客が静かに奥まで詰めて場所を譲り合う様に深く感銘を受けたそうです。ただし、中国に比べて割高な交通費にはびっくりでした。
成田を早朝に出発してホテルに荷を下ろし、急いで群馬大学太田キャンパスに向かい、研修プログラム最初のイベントである国際会議に参加しました。色々な材料や製品の耐久性や環境への影響に関する発表を熱心に聞き、議論に参加しました。また、徐彬さんは、Intensification of Industrial Wastewaters Treatment of Anionic Surface Active Agentsというタイトルで口頭発表を行いました。国際会議のエクスカーションで訪れた坂本工業では、製造ラインで活躍するロボットに感心しました。スバルの前身・中島飛行機の創設者である中島知久平の邸宅は豪華なモダン和風建築で、雪に覆われた庭園と相まって、息をのむような美しさでした。
本プログラムの主眼である、日本の繊維産業の歴史と現状に関する学習は、世界遺産の富岡製糸場と群馬県立日本絹の里の視察、および群馬県繊維工業試験場の見学・情報交換を通して行いました。また、群馬大学太田キャンパス、日本製紙、東邦工業、シルクウェーブ産業を視察して最先端繊維技術に関する知見を深めました。
特に、日本製紙で説明を受けた最先端素材のナノセルロースについては、東邦工業が群馬大学と共同開発している新複合材料に利用されていることを紹介されて興味深かったです。一方、魅力的な繊維製品の開発事例として、ハイエンド志向製品を創出可能な画期的新素材であるシルクウェーブ産業の絹製中綿「シルクウェーブ」と、同社が群馬大学発ベンチャーのクレスールと共同開発した「プラズマチタンダウン」には目を見張りました。
さらに、群馬大学の教育プログラム(GFL)によって大連工業大学で研修した経験がある日本人学生の皆さんに、最終日に行ったプレゼンテーションの準備や自由時間での交流を通して大変親切に接していただき感謝しています。いつの日か彼らが協力し合って、繊維産業活性化に貢献してくれることを期待しています。