2017年度 活動レポート 第382号:異文化理解フォーラム

2017年度活動レポート(一般公募コース)第382号

ものづくりの文化・その知恵と技術に触れる日中高校生交流

一般社団法人異文化理解フォーラムからの報告

2018年2月4日~11日の8日間わたり、山東省泰山中学高校生15名、引率教員2名(内自費参加1名)を招へいし、中国高校生の見聞を広め、知識を高めることを趣旨とした活動プログラムを実施しました。

プログラムでは、トヨタ自動車をはじめ、名古屋大学、犬山市の見学により、日本の産業技術を支えるものづくり文化と「研究と創造の精神」を体験しました。また特徴が異なる2つの高校を訪問し、日中両国の学生同士の交流のほか、ホームステイで一般市民とも交流を深め、現代日本を近くで、深く、具体的に知る内容になりました。

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1日目

1月末の日本は、全国的に大寒波に襲われ、大雪に見舞われた地域があったにもかかわらず、泰山中学校一行は、2月4日晴天の下、日本の地に降り立つことができました。その後の活動の様子は、主に高校生たちの感想文を引用させていただきます。

2日目

トヨタ自動車工場の見学

「組み立てラインでは、誰もが無駄なく動き、真摯に仕事に取り組んでいました。どうしてこれ程てきぱきと仕事をこなしているのかガイドの方に尋ねたところ、『日本人は小さい頃から、このように教育されています。責任感と真面目さは、ほとんどの日本人に備わっています。』と教えて下さいました。また、トヨタの生産管理法として、労働者が働きやすいように環境を改善し続けているという話が心に残りました。」

トヨタ会館の見学

「大洞和彦館長によるトヨタ自動車の歴史や経営理念、社会貢献への取り組み等Toyotaの紹介では、トヨタ自動車の素晴らしい成績を誇示するのではなく、トヨタ自動車の企業理念である、大企業の責任として社会に貢献し、地球の環境を守ることを考えているという話を聞きました。さすがトップ企業です。このような精神を中国に持ち帰り、伝えていきたいと思いました。」

アイシン高等学園訪問・コムセンター見学

「日本人学園生と一緒に生産技術を高めるための企業内の訓練校に、世界中のアイシン子会社から外国人社員が集まります。現場リーダーの育成コースとして、中国からきた研修社員たちの誰もが一生懸命学んでいます。彼らとの交流の中から、研究開発や科学技術とは何なのか、異文化理解は何なのかが少しわかるようになった気がします」。

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3日目

名古屋大学訪問

近年ノーベル賞受賞者を輩出した名古屋大学でG30の概要の説明を受けました。ノーベル賞展示室で、足立教授はノーベル賞の成果について話され、受賞者たちの物語、『どのようにして科学の頂点にたどり着くことができたたのか』を紹介して下さいました。その後、4名の中国人留学生と国際交流関係の教師と一緒に昼食をしながら、日本での留学生活について話を伺う機会を得ました。

高校生たちから寄せられた感想:
「G30プランの話はとても魅力的でした。素晴らしい環境の中で勉強できることと学費が安いことは、とてもメリットが高く、帰国したら勉強に励み、将来は留学の形で日本に来たい。」

「留学生たちとの交流から、私と彼等との差を実感し、自分に足りない物が分かりました。留学生たちと接して、彼らが日本にいることで日本人の謙虚さや控えめに振舞うことも身につけているように感じました。とても素敵な先輩とお話ができて幸せでした。」

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トヨタ産業技術記念館の見学

「トヨタ自動車が自社の発展の歴史をこのような形で詳しく記録・保存し、そして伝えることは、トヨタ精神の教育と継承に大きな効果と意義があると思います。トヨタの歴史を知ることで科学技術に対する理解が深まり、視野も広がりました。これまで科学技術は面白くないというイメージを持っていましたが、この訪問を通して科学技術の発展は人類に恩恵をもたらし、より便利な生活を与えてくれたことを知りました。そして我々の生活に大きな変化をもたらしたことを実感しました。」

中日新聞社訪問

中国では、新聞社は一般人にとって無縁の所で、新聞制作は全く想像もできないことでした。編集フロアで新聞制作の仕組みを教えてもらって、中国語を話せるベテラン記者に「記者になる条件」について語っていただきました。高校生たちには、これまで全く考えていなかったメディアという職業が人生選択の一つとして増えたようです。

4日目

豊田市長表敬訪問

「中国では、このように地位の高い方に会ったことが無い私たちは、とても緊張しました。しかし、市長さんはとても優しい方で、私たちの今回の活動について真摯な態度で話を聞いてくださったので、安心しました。市長さんは笑顔を絶やさず、いくつか質問をされました。市長さんに親近感を覚えました。」

とよたエコフルタウン見学

「ここでは、新しい技術をたくさん見学しました。例えば、ハスの葉の表面の構造を真似て作られた撥水包装紙、蜘蛛の糸の特性を生かした技術で作られた強度の高い材料などです。これらは、自然から学んだことを、自然を守るために使うという考えを基にしています。水素を燃料として使っている車は、環境に与える影響を考えて生み出された技術です。自然から学んだ多くの智恵を生かしています。今後は、いかに自然を壊さないようにするか、ということを念頭に置き、環境に優しいエコの時代の発展に向けて頑張りたいと思います。」

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SSH県立豊田西高校訪問交流

「英語の授業を体験させていただきました。たとえ英語が上手く話せなくても、豊田西高校の生徒の皆さんが笑顔とジェスチャーで言いたいことを表現してくれたので、言葉の壁は難なく乗り越えられると思いました。先生が“enjoy the class.”とおっしゃられた通り、言葉が通じなくても交流を楽しめました。」

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「2コマの英語の授業はあっという間に時間が経ちましたが、西高の生徒達は私たちと少しでも多くの会話をするために懸命で、私たちは母語ではない言葉でお互いを理解しあうことができ友達になれました。彼らと再会したいと思います。」

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「科学クラブの紹介は素晴らしいです。生徒達が自分で問題を発見し、調査方法を提案します。教師の指導のもとで研究を試みます。学校側が生徒たちに多くの選択を用意している環境で、科学、体育、音楽など様々な部活で生徒たちが自分の特性を生かし、学校生活を楽しんでいます。」

「この場面はアニメと同じで、ずっと憧れていたところに自分自身が立っている感動がありました。私たちは初めての客ではなく、元からここで生活しているようで居心地が良かったのです。」

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5日目

犬山市の訪問

「犬山城下町の街道はとても静かできれいで、騒がしさとは無縁なところでした。青空の下で、このような環境に身を置くことができてとても嬉しいです。憧憬の思いで犬山城を登り、歴史ある文化建築がこれほど状態よく保存されていることに大変震撼させられました。」

「犬山祭とからくり人形のパフォーマンスと解説から日本人が自国の文化を大事にすること、そしてものづくりに対する熱い精神を感じました。からくり人形師玉屋庄兵衛さんの作品に対するこだわり(材料、製作技術など)、一年かけて創るということは、信じがたいほどの精神力とこの仕事に対する情熱を持っているということで、その姿勢こそが、最高な作品が作られる理由だと思います。私たちもこのような精神を学ぶべきです。」

「今日は犬山で、日本のたくさんの文化が中国から伝わってきたことを知りました。しかし、今の中国にはそれがないことを大変残念に思います。」

6日目

ESD加盟校 県立豊田東高校訪問交流

「豊田東高校の国際化、多様化の特徴は強烈でした。カリキュラムの設定は細かで、future planもあります。授業科目の選択は大学と同様に、経理、料理、デザイン、介護など、生徒達は自分の将来の計画や興味から授業コースを自由に選びます。」

「琴、茶道、剣道などの部活はとても豊富で、印象的でした。生徒が将来の職業の選択や大学進学のために必要な環境が整い、最適な指導が提供されています。部活の剣道と茶道の見学と体験では、彼らの自ら伝統文化を伝承しようとする精神を感じ取りました。」

「ここで自分と同年齢の高校生の学校生活を見ることができました。生徒達が授業中積極的で、多芸多才で羨ましいです。すべての部活の見学に付き添ってくれた彼らは終始笑顔で私たちと接してくれました。生徒と教師たちのもてなしに感動しました。」

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7日目

ホームステイ

「ホームステイは、ホストファミリーの方に、まるで家族のように温かくお世話していただきました。私が和食に慣れていないことを心配してくださって、わざわざ私を連れて朝ご飯を買いに行ってくれました。 ホームステイでは日本の家庭の生活を知ることが出来ました。皆さん仕事があって、学校があって、勉強もあって、とても忙しいのに、それでもまだ、私とおしゃべりをしてくれました。私が買い物をしたいと言ったら、まず、私が欲しいものをメモして、デパートに着いたら、パンフレットで案内してくれました。とても感動しました。」

8日目

成果発表会とお別れ会

主催者と活動を支えていただいたボランティア、そしてホストファミリーの方たちに、高校生と教員たちは日本で体験したことと感想を報告しました。
報告会が終わると、料理ボランティアの皆さんが心を込めて作ってくださった日本料理を、皆で美味しくいただきました。時間はあっという間に過ぎてしまい、皆それぞれが別れを惜しみ、再会を願って、出立の時を迎えました。晴天に恵まれ、日本の皆様の温かい見送りの下、訪問団の面々はバスに乗り込み、空港へと向かいました。

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招へい者の皆様から回収した「JSTアンケート結果」は次の通りです

  1. 1)今回の来日さくらサイエンスプログラムの交流内容に満足していますか?
    非常に満足 (17名) 100%
  2. 2)今回のプログラムの中最も印象深いのは何でしょうか?
    科学研究機構見学(1名) 6%; 科学技術館見学(4名) 24%; 日本文化体験 (12名) 71%
  3. 3)見学先の高校や、研究機関、科学技術館などの科学技術体験について満足していますか?
    非常に満足 (17名) 100%
  4. 4)日本を再度訪問したいですか?
    非常に希望 (16名) 94% ; 希望 (1名) 6%
  5. 5)上記の4)問に回答に「①非常に希望②希望」と答えた方にさらに質問:どんな形で日本を再訪問?
    留学生(7名) 41% ; 研究者(2名) 12% ; その他 (8名) 47%

活動の実施に関わった者の感想

「今回は、日本の科学技術の見学と体験、そして日本文化に触れる機会を得て、学生のみなさんにとっては、中国以外の文化や人と接する初めての貴重な機会となり、さまざまな場面で、新鮮な発見や感動を味わうことができたと思います。特に、同世代の学生同士の交流では、当初心配された言葉の壁やコミュニケーションの難しさなどは、すぐに吹き飛び、和気あいあいと交流する様子がとても印象的でした。」

これらの経験を生かし、学生のみんなが将来活躍してくれることを期待するとともに、今回のプログラムに支援金を提供してくださったさくらサイエンスプログラムに深く感謝いたします。