2017年度活動レポート(一般公募コース)第369号
タンマサート大学シリントン国際工学部の優秀な学生が神戸大学で学ぶ
神戸大学からの報告
2018年1月21日~30日の10日にわたってタンマサート大学シリントン国際工学部(タイ)から学部生3名と大学院生4名を招へいして、神戸大学(兵庫県神戸市)での先端材料研究インターンシップと、SPring-8放射光施設(兵庫県佐用郡)ならびに島津製作所創業記念資料館(京都府京都市)の見学を実施しました。
1992年に設立されたシリントン国際工学部は、学部から大学院までのすべての授業を英語でおこなっています。ゆえに(タイからみた)留学生の比率が大きく、今回来訪した学生たちの国籍もタイ・ベトナム・ネパール・韓国にわたり、引率教員はインド出身という多国籍訪問団となりました。
今回のインターンシップでは理学研究科と工学研究科に属する化学・応用化学・材料工学に関連した7つの研究室が、招へい学生を1人ずつ5日間受け入れました。団体行動をあえて避け、光触媒・量子ドット太陽電池材料・電気化学・有機合成化学・高分子ナノファイバー・分離膜・生体関連ゲルという、それぞれ異なるトピックに単身飛び込ませたわけですが、それだけに受け入れ研究室の日本人学生たちとの交流が密になり、若者たちによい刺激を与えたようです。
実質4日半のインターンシップでしたが、学業や英語能力をもとにタイ側で厳選された(倍率2.7倍!) 学生たちは、それぞれに意義ある成果をあげてくれました。論文発表に発展しそうな成果もあると聞いています。帰国前日に一人ひとりに10分ずつスクリーンを使った成果発表をさせました。日常的に英語を使っている学生たちだけに、質疑まで含めて堂々とした発表でした。
インターンシップの合間をぬって日本が誇る放射光実験施設(SPring-8)を見学しました。できるだけ日本の日常に接してもらうために、神戸三ノ宮からJR在来線に乗って相生へ、さらに路線バスに乗り換えてSPring-8へと往復させました。現地では理化学研究所の配慮で英語による見学ツアーを実施いただくことができました。山深い場所に忽然と現れる最新鋭かつ大型の実験施設にみな驚いていました。
神戸大学とSPring-8というアカデミックな施設だけでなく、この国の科学と技術を支えてきた民間企業についても知ってもらうことを招へいの目的としました。全体で10日間の滞在なので一ヶ所だけの訪問となりましたが、島津製作所創業記念資料館を日曜日を使って見学しました。幕末に仏具師であった創業者が科学機器の製作をはじめ、後継者に恵まれて事業を幅広く展開していった軌跡が、創業時社屋(和風建築)を再現した記念館に当時の製品を展示する形でおさめられています。島津製作所の好意により、ここでも英語による解説ツアーをおこなっていただきました。
一行が神戸に滞在した10日間は、何年かに一度というほどの寒さでした。神戸市街地にある大学キャンパスでも車のウィンドウガラスにうっすらつもる程度の雪が舞いました。南国出身の学生たちは、予想外の光景にとても喜んでいました。指で雪の上に字を書いたりして、はじめて雪を見たのだから当然かもしれませんが、日本の小学生と同じようなはしゃぎようでした。ホストとしては、誰も体調を崩すことなく元気に帰国させることができてほっとしています。
今回のインターンシップを契機として、神戸大学理学研究科はタンマサート大学シリントン国際工学部と交流協定を結びました。次年度には神戸の学生を先方へ派遣する可能性を探ります。さくらサイエンスプログラムで芽生えたFace-to-faceの信頼関係を、双方向かつ定常的な交流へ育てていきます。