2017年度活動レポート(一般公募コース)第354号
アジアの若者が持続可能な農林水産業の取り組みや環境技術を学ぶ
高知大学農林海洋科学部からの報告
さくらサイエンスプログラムにより、カセサート大学・コンケン大学(タイ)、ハノイ教育大学(ベトナム)、マレーシアサラワク大学(マレーシア)から計10名を招へいしました。
プログラムでは持続可能な農林水産業の取り組みや環境技術を幅広く、体験しながら学びました。本学の南国フィールド(農場)では、養液栽培システムや日本独自のフルーツトマト栽培の仕組みとその驚きの甘さ等に触れ、また、イネのポストハーベスト、米の品質および流通についても学びました。また、高知県農業技術センターを訪問し、省エネ型のハウス栽培技術など、地球温暖化に対応するための最先端の農業技術を見学しました。
本学の嶺北フィールド(演習林)では、チェンソーによる樹木の伐倒とプロセッサによる集材を見学し、また、人工林の光環境を改善するための枝打ち作業を行いました。寒い季節でしたが、日本の学生と一緒に実習を楽しんでいました。水産分野では、最新の加工設備を備えた、しらす加工場の見学も行いました。
また、6次産業化の先進事例として、高知県馬路村農協を訪問し、ユズの生産・加工・販売の様子を見学しました。山深い小さな村の農協が、ゆず果汁の販路開拓に始まり、最新の分析機器を備えた研究室を構え、ゆず種子油の化粧品を開発するところまで発展してきた歴史に感銘を受けた様子でした。
自然資源の利用と保全については、室戸岬(ユネスコ世界ジオパーク)を訪問し、地形と地質の特徴、その特徴と深く関わる人々の暮らしや歴史までを観光資源としながら保全していく、ジオパークの活動について学びました。高知県立牧野植物園では、植物標本の作り方や標本庫、牧野文庫等を見学し、また、薬草に関する展示コーナーの見学を通して、日本と熱帯諸国の親密なつながりも学びました。
環境分野の先端的研究として、高知大学海洋コア総合研究センターでは、海洋コアサンプルによる地球環境変動の解明や、国際的な共同掘削研究プロジェクトについての講義を受けた後、コアサンプルの模型を使って地層観察と同定を体験しました。続いて、海洋生物資源利用の基礎として、海洋微生物(微細藻類)の顕微鏡観察も体験しました。
また期間中には、黒倉寿東京大学名誉教授から「住民参加型による沿岸資源管理」と題した講義をいただきました。地方の行政や住民組織などが強固でない地域での問題解決に、知識や技術をどう活かすのかという視点が新鮮だった様子で、活発な質疑が行われました。
高知滞在の最後には、成果発表会を行いました。発表会では本学の学生の海外実習の成果報告も合わせて行い、互いに生活や文化的な違いに驚いた話なども紹介され、夜にはバーベキューパーティーを行い交流が深まった様子でした。
最終日には東京の科学未来館を見学し、体験しながら学べる展示に、興味津々の様子で展示プログラムを次々と周っていました。
アンケートでは、日本への留学や、研究者として再来日したいというコメントも見られ、参加者にはよい刺激になったようです。
今回の招へいにより上記の4大学との連携を一層強めることができました。この連携を生かし、フィールドサイエンスを通じた様々な教育・研究プロジェクトを積極的に進めていきたいと考えています。