2017年度活動レポート(一般公募コース)第309号
タイの若者が持続可能な社会を支える都市計画の技術と取り組みを学ぶ
横浜市立大学グローバル都市協力研究センターからの報告
横浜市立大学グローバル都市協力研究センターまちづくりユニットでは、さくらサイエンスプログラムの支援をうけて、タイ・タマサート大学建築計画学部都市デザイン・都市開発国際プログラムより、学生10名、教員1名を招へいし、「持続可能な社会を支える都市計画の技術と取り組みを学ぶ」をテーマとするスタディ・ツアーを2018年1月28日から2月4日にかけて実施しました。
さくらサイエンスプログラム招へい学生10名のほか、同大学からさらに学生8名が参加し、本学からも計15名の学生が代わる代わる参加しています。本学では、2017年9月にタマサート大学において、まちづくりに関する国際学生ワークショップを実施しており、今回は、同ワークショップに参加していたタイの学生を招へいし、同じく同ワークショップに参加していた本学学生が日本滞在をサポートする体制となりました。
急速な経済成長に伴い、人口の過度な集中が起こり、無秩序な都市開発が進むバンコクでは、交通、住環境、景観等の様々な都市問題が起きており、都市計画の総合性と有効性が重要課題となっています。また、今後予想される少子高齢化への対策も求められつつあります。本活動ではそうした多様な都市問題と向き合うタイの学生に対し、日本の都市の計画技術や環境技術、地域再生の取り組みを学ぶ機会を提供することを目的として、講義と実地見学を組み合わせて行いました。
第1日目は、横浜の都市デザインについて講義を受けたのち、講義の内容を確認しながら関内地区を中心にまちあるきを行いました。
第2日目は横浜市内の二つのニュータウンを訪れ、良好な住環境の形成について学びました。金沢シーサイドタウンでは建設から40年以上を経ても建物や空間の状況が良好であることに、港北ニュータウンでは横浜の中心市街地から遠くない場所に豊かな自然を生かした住宅地が広がっていることに驚いた様子でした。
第3日目は、横浜黄金町地区のアートを通した地区再生の事例と、みなとみらい21地区の大規模都市再開発の事例を学びました。タイの都市計画はトップダウンの傾向が強いため、黄金町における産官学民の多様な主体の協働の仕組みは、アーバンデザイナーを目指す学生たちにとっては今後取り組むべき課題であると感じられた様子でした。みなとみらい21地区ではランドマークタワー展望台より快晴の横浜市域を眺め、初日の都市デザインの講義の内容を高所からも確かめることができました。
第4日目は、東京を訪れ、歴史的建造物の保存と良好な都市景観の形成について学びました。丸の内地区の見学はテキストで学んできた容積率移転を実例として確かめる貴重な機会となりました。
第5日目は雪の降る中鎌倉を訪れ、日本の伝統文化やタイとは異なる仏教文化にふれるとともに、歴史的環境保全のための都市計画上の規制等を学びました。最終日は、活動成果のまとめの機会とし、5日間のプログラムを通して学んだこと、特にタイと日本の都市開発やまちづくりについて、両国間の共通点と相違点、また、そうした共通点や相違点が生じる背景にあるものについて、グループごとに検討し発表しました。
多くのグループが、行政の力が圧倒的に強いタイに比べ、日本は民間を含め、ステークホルダーが多様であることを指摘し、またタイの引率教員からは、都市デザイナーの役割として、社会の中に分け入り、そうした多様な主体どうしをつなぎ、まちづくりの環境をつくることが指摘されました。
学生の感想からは、産官学民の協働、整然とした住宅地やまちなみ、長期的なまちづくりのプロセス等、見聞きするものそれぞれに、学びがあった様子が伺えました。特に、本プログラムを通して、座学だけではなく、その実践の現場を見学できるようなアレンジをしたことが、日本のまちづくりのよりよい理解につながったようでした。昨夏のバンコクでのワークショップに次ぐ再会となったタイの学生と本学学生の間では友情もぐんと深まり、きわめて有意義な国際的な学術交流の機会になったと実感しています。ご支援いただいた「さくらサイエンスプログラム」に心より感謝申し上げます。