2017年度活動レポート(一般公募コース)第302号
起業家的イノベーション生態系の強靭性と倒産リスクに関する日印の比較研究
豊橋技術科学大学総合教育院 藤原孝男さんからの報告
①プログラムの概要
本プログラムは、インド理科大学IISc(Indian Institute of Science)の経営研究科DMS(Department of Management Science)との間で、2015年度「インダストリー4.0 への移行に関するMOTの可能性」及び2016年度「日本・インドのベンチャー生態系の比較研究」の延長線上に位置付けられ、2018年1月21日~28日に院生10名(博士課程5名<内女性1名>・修士課程5名<女性2名>)を招へいして実施されました。
また、2017年5月には、JSPS-ICSSR二国間セミナーも両大学間で開催し、シームレスに学生・教員間の交流を継続しています。今回のテーマは、バンガロール・豊田市・浜松市の各産業クラスターにおけるイノベーション資源の循環に関する合理的意思決定についてであり、学外者も含め議論しました。
②交流の特徴と成果
施設見学としては、学内では半導体研究施設のクリーンルーム、学外では浜松ホトニクス中央研究所内の研究室、アルモニコスR&Dセンターでの3D CADソフトウエア開発、トヨタ会館・堤工場自動車組立ライン、そして、豊田市「ものづくり創造拠点SENTAN」でのアイデア交流・試作施設をそれぞれ見学しました。
学内での教育交流では、「リアルオプション」「金融工学」の授業でのプレゼンと学生との議論、研究交流ではゼミ生とのプログラムテーマに合致した修士・博士論文に関する内容の発表・討論を交わしました。
学外でも、「はままつ起業家カフェ」での浜松市・商工会議所との間でベンチャー生態系での創業・廃業に関する統計・事例のプレゼン・議論で意見交換し、特にJETROを誘致した国際化が強調されました。
ものづくり創造拠点SENTANではポスト自動車産業に向けた施策・統計・事例のプレゼンと、バンガロールでのStart-up India、Make in India、Digital Indiaの状況とベンチャーの成功・失敗の要因、およびソフトウエア産業と製造業との融合に向けた施策・事例のプレゼン・議論がされました。特に、交通インフラ・スマートシティなどのプラットフォームでは、インドのソフトウエアベンチャーと日本の中小製造企業との協働の可能性が示唆されました。
エクスカーションとして、トヨタ産業技術記念館での繊維から自動車への産業シフトでの技術的連続性の展示を見学し、熱田神宮にて日本の精神文化を体験しました。
交流成果としては、人口比で圧倒的なインドの院生トップ層と議論する新鮮な刺激と、過去の参加者の2018年4月博士研究員としての来日予定、2018年度国費博士課程奨学生への出願などであり、交流が着実にエントリーからコア・レベルに進展しています。
③将来の課題と展望
水道・電気・鉄道などのインフラに感激したようではありましたが、日本と比較し米欧からの招へい機会が豊富とのことで、研究施設の水準には必ずしも驚かない学生も少数ではあるが見られました。ハードではなく、日本のイノベーションの文化的・人的な繊細さを深堀し紹介すべきではないかと思われます。実際に日本人の対応の丁寧さに感激していました。今後は、学生の草の根交流を踏まえて、教員交流も進めたいと考えています。