2017年度活動レポート(一般公募コース)第273号
フィジーの「働く人」の健康を守る基盤づくりのために
産業医科大学からの報告
世界で唯一、働く人の健康を守る産業保健を中核にした産業医科大学では、平成29年12月4日から10日までの7日間、さくらサイエンスプログラムによるご支援のもと、フィジー国立大学医学部の学生8名、大学院生2名、引率教員1名の計11名を受け入れました。
今回の交流は、産業保健の基盤が弱いフィジーにおいて、将来、働く人の健康を守る人材を輩出したいというフィジー国立大学の意向を受けて、学生、院生の方々に日本の産業保健システムを実際に見聞していただき、産業保健の意義と重要性を肌で感じてもらうことを主な目的としました。
12月の平均気温が25℃というフィジーから冬の福岡空港に降り立った一行は、体験したことのない寒さに興奮しつつ、無事に産業医科大学に到着しました。
翌日は、本学学長の歓迎あいさつでプログラムがスタートしました。開講式の途中で雪が降りはじめ、雪を窓越しに眺めながらの開講式となりました。
プログラムは、講義と見学・体験のバランスに留意して構成しました。
講義は、日本の産業保健の歴史、産業医制度や産業保健システムについての概論や、職業癌などの職業病予防対策から職場のメンタルヘルス対策まで、幅広く行いました。
本学ストレス関連疾患予防センターの実験室では、実際に自分自身が被験者となってストレスの簡易測定を体験し、その結果に一喜一憂するなど興味をもって見学していました。
また、工場見学では、単に見学にとどまらず、自分自身が産業医や産業保健スタッフになったつもりで見てもらい、職場の危険源が何か、どこにあるか、働く人の健康を守るためにはどうすべきか、を見学後に議論して、産業保健の理論と実際の適用についての実習として活用しました。
滞在4日目には、本学学長や学生有志が参加する立食形式の昼食会を行い、学生同士の交流の機会を設けました。
閉講式には、本学の教職員も多数参加しました。閉講式終了後、フィジーの学生一行がこのプログラムのためにあつらえたおそろいのユニフォーム姿でフィジーのダンスを披露してくれたのが印象的でした。
土曜日には、本学の所在地である北九州市にある小倉城などを見学し、日本文化の一端に触れていただくことができました。
受入れを通じて、引率の先生の指導が行き届き、学生のみなさんが熱心でまじめな姿勢が印象的でした。
今回の引率者であるドナルド・ウィルソン学科長は、本学に大学院生、その後教員として計11年間本学に在籍していた方で、帰国後は、フィジーの産業保健の基盤となる人材養成に奔走されています。フィジー国立大学医学部と産業医科大学では、国際共同研究を立ち上げようという構想があり、今回の交流はその地ならしにもなりました。さくらサイエンスプログラムの参加がきっかけとなって、第2、第3のドナルド先生が出てくることを期待しながら一行をお見送りした次第です。