2017年度活動レポート(一般公募コース)第189号
ミャンマーの天然薬物研究を担う大学院生との研究交流
富山大学和漢医薬学総合研究所からの報告
さくらサイエンスプログラムにより、平成29年12月3日から12月11日まで、ミャンマー・ヤンゴン大学化学部から3名の大学院生と、引率の教員として同大学薬学部長が来日しました。本プログラムは、ミャンマーの天然薬物研究を担う大学院生が我が国の天然物化学研究を体験することにより、ミャンマーの天然物化学に関する研究水準を向上させ、ミャンマー国内における創薬研究の発展に資することを目的に実施しました。
初日
昨年度の本事業における進捗状況の確認と今年度の実験の打合せを行った後、昨年度においてミャンマーの薬用植物抽出エキスから分画した粗精製液のヒトがん細胞に対する細胞毒性試験を開始しました。本学研究員がヒトがん細胞への粗精製液投与の方法を実演した後、招へい者らがその操作を行いました。しかし、学生たちは実際に行ってみると、ピペット操作が思うようにできない等、操作一つをとっても経験が必要であることを強く実感していました。
2日目
前日に用いた粗精製液の抗菌活性試験を行いました。前日の細胞毒性試験で操作にも慣れてきたので、この日の抗菌活性試験は短時間で終了することができました。また、昨年度のさくらサイエンスにおいて、招へい研究者が化合物の分離法の知識が十分でなかったことを踏まえ、これらの操作に必要な一般的方法論の講義を行いました。
3日目-8日目
抗菌活性試験の結果を確認しました。粗精製液には弱いながらも抗菌活性が認められ、招へい研究者は、抗菌活性化合物をミャンマーの植物から単離できるのではないかと期待に胸をふくらませていました。また、前日の化合物の分離に関する講義を踏まえ、この日から化合物の単離を開始し、最終日前日の8日目までこの操作を続けました。
昨年度は機械の扱い方の習得に時間を要したが、今年度は、前日の講義の成果が見られ、円滑に実験を進めることができました。しかし、今年度は、より精密な機器を使用する実験を行うことができず、短期間の内に、より効果的に研究を進める工夫が必要であることが今後の課題として残されました。
5日目
初日に行った細胞毒性試験の結果の取りまとめを行いました。統計処理でエクセルを使用しますが、使用しているバージョンが異なるからか操作に手間取ってしまい、意外にもここで時間を要しました。
7日目
本学の民族薬物資料館を見学し、薬都富山の歴史と伝統、和漢薬を初めとする世界の伝統薬物や漢方薬について学んだ後に、和漢薬製造販売の老舗である池田屋安兵衛商店と医薬品製造メーカーである廣貫堂の資料館を見学しました。池田屋安兵衛商店では、丸薬作りを体験し、均一な丸薬を作る難しさを体験しました。廣貫堂資料館では、今はありませんが、ミャンマーにも廣貫堂支社があったことを知り、感銘を受けていました。これらの見学を通して、日本と自国との伝統薬物に対する概念の相違点や類似点などを学ぶことができた1日となりました。
廣貫堂資料館見学
最終日
来年の本事業の打合せを行いました。その後、修了式で森田教授から各人に修了証が授与されました。また、アンケートでは、全員が今回の訪日に対して「非常に満足」と答えていました。「さくらサイエンスプログラム」により、とても有意義な国際交流の機会をいただいたことに、心より感謝申し上げます。