2017年度活動レポート(一般公募コース)第184号
学生の研究意欲を高めた、香港科学技術大学との交流プログラム
長崎大学環境科学部からの報告
2017年11月6日~2017年11月11日の日程で、香港科学技術大学電子工学学科から4名の大学院生を招へいし、「庭園鑑賞によるストレス緩和効果に関する研究のための認知症患者対応の眼球運動測定器開発の促進」をテーマに、交流プログラムを実施しました。
香港科学技術大学は、本土中国の留学生が学生数の1/4、教員の1/3が欧米出身の外国人で占め、授業は全て英語で行っている大学です。長崎大学とは、末期認知症患者に対する非薬物療法としての庭園鑑賞の効果の解明に関する共同研究の実績があり、長崎県佐世保市の病院に2つの実験用日本庭園を造成しました。
庭園鑑賞のメカニズムの解析には、眼球運動の計測が必須ですが、これまでの眼球運動測定器では末期認知症患者に機器の装着が困難なため、眼球運動の測定は健常者に限られています。
そこで非装着型の眼球運動計測機の開発を試み、その実用性を確認するために今回のプログラムを計画しました。交流の日程は以下の通りでした。
当初の計画では、4名の大学院生と指導教員1名を招へいする予定でしたが、指導教員がアメリカ国籍であったため招へいすることができず、プログラム4日目~6日目に教員が自費で来日することとなりました。
来日3日目、一同は佐世保に移動し模擬実験を予定通りに始めましたが、光線の加減が香港の実験場と異なり、機器が作動しないことがわかりました。また、高齢者の視線の動きにも機械が対応せず、3日目の模擬実験は中断を余儀なくされました。
しかし、4日目に指導教員により問題が解決され、予定した被検者すべてのデータを取得することができました。国籍に関わらず指導教員が学生に同伴することは、プログラム遂行上で必須であることが明らかにされる一幕でした。
懇親会の際、送り出し機関の学生に今回の来日で最も印象に残った点を尋ねたところ、学生は長崎大学がプログラム外の活動として行った長崎原爆資料館の訪問であったと答えました。
その理由を、「日中間には戦争の歴史があり、私たちの祖父母の世代には激しい対日感情を抱く人も少なくありません。その感情は両親の世代にやや薄れ、私たちの世代にはテクノロジーの進歩と共にかなり改善されていると思います。つまり、私たちはネットで可能になった情報交換により、日本にも多くの友達がいます。戦争による悲劇に国境はなく、原爆資料館の資料はそれがいかに甚大なものであったか教えてくれました。このような悲劇を2度ともたらさないために、私たちは人々の絆を繋ぐ技術革新に貢献していきたいと思いますし、このような共同研究はとても意義があると思います。」と答えました。
共同研究の枠を超えた文化交流が、結果的に学生の研究意欲を高めることができたと思われます。