2017年度活動レポート(一般公募コース)第182号
カンボジアの若者が、日本における産学連携の取り組みについて学ぶ
日・タイ経済協力協会からの報告
日・タイ経済協力協会は、さくらサイエンスプログラムの支援を受けて、2017年9月10日~9月17日の日程で、カンボジア工科大学の教員10名を日本へ呼び、「日本における産学連携の取組み」をテーマに研修を行いました。その際の概要を以下に報告いたします。
初日
午前中は、日本科学未来館で日本における先端技術の産学連携に係る知見を得ることができ、また、ヒューマノイドロボット「ASIMO」の実演見学の機会も得ました。
午後は東京大学の産学連携プラザを訪問し、イノベーション推進部長の各務先生から、産業界との「協創」を通じて、その様々な成果をイノベーションに結実させる同学の取り組み等に加えて、力を入れておられるアントレプレナーシップ(学生起業)教育についても説明いただきました。
2日目
午前に訪問した芝浦工業大学では、同学の産学連携についての取り組みについて、連携推進委員の先生方からその体制、企業とのマッチング、ネットワークの構築等、事例を交えながらのご説明を受けました。私立理工系大学で唯一「スーパーグローバル大学創成支援」に採択され、新たなグローバル化を推進する同学では、ラボでの実験や取り組みも見学させていただき、介護ロボット等のご紹介も得て実際に取扱う経験もさせていただきました。
午後には東京電機大学を訪れ、産学連携本部で産学交流センターの取り組みをはじめとして、同学の歴史、業績も含めて特別講義をしていただきました。そののち学内を案内してくださり、実学を基礎とする方針を現した省エネ電機システム、耐震、免振装置など実際に学内で使用されている技術の紹介をしていただきました。
3日目
午前中に、東京東信用金庫を訪問しました。澁谷会長自ら出迎えてくださり、大きなバナーを掲げて温かく歓迎してくださいました。中小企業参加の産学連携を支援し推進する金融機関としての意義をと、フリーフォール型深海探査機「江戸っ子1号」の開発事例を、実際にこの「産学官金連携プロジェクト」に参画された桂川様が説明してくださいました。研修生からは「どのようにしたら資金援助を受けることができるか」という質問が寄せられていました。
午後は上野の国立科学博物館で開催されていた特別展「深海2017」で「江戸っ子1号」の実物を見学し、そののち「江戸っ子1号」に取り付けられている強化ガラスを製造した、岡本硝子を訪問しました。実際のガラスづくりの工程を工場で見せて頂き、最新の技術と昔ながらの手法とを融合した日本の技術の粋を見せていただきました。
4日目
午前中に東京工業大学の学術国際情報センターを見学させていただき、スーパーコンピューターTSUBAMEを民間企業にも開放することで産学連携の基盤強化に繋げているユニークな取り組みなど、同大学の産学連携活動全般についてご教示いただきました。午後には北海道に移動しました。
5日目
午前中は、北海道経済産業局を訪問し、児嶋局長以下から北海道の産学連携の先進的な取り組みをご紹介いただき、その後、北海道大学の国際連携機構にて昼食懇談の形で大学側の活動紹介、午後は、北大リサーチ&ビジネスパーク内のインキュベーション施設を見学、さらに陽子線治療の世界的な権威である白??教授から、産学連携の成果である北大陽子線治療センターのご紹介をいただきました。
最終日
東京に戻り、東京電機大学の近藤教授より、日本の産学連携の歴史、現状、その効果や役割、それぞれの活動の国際比較、各国の政策動向など、包括的な講義を受けました。
最後に、修了式を実施しましたが、参加者はそれぞれ「カンボジアにおける産学連携の進め方を考える上で非常に参考になった」と、今回の訪日研修を高く評価していた。また、参加者の中には、日本の大学に留学して引き続き、日本のことを学びたいという人も数名いました。
今回、当初参加予定だったメンバーが、政府の任用試験が突然決まったことなどから4名、参加できず、直前でメンバー変更となったため、フライトキャンセル料などを当協会が負担することになりました。カンボジアなど、途上国ではこのような急な事態がいつ起こるとも限らず、それを避けようと思えば、最初から途上国からの受入れを断念しないといけない、そういう点は残念です。
(JST注:さくらサイエンスプログラム一般公募コースでは、「異常気象、天変地異などの不可抗力な事情以外で、事前手配された渡航費、国内旅費、プログラム経費、謝金、その他経費などのキャンセル料および取扱い手数料等にかかる経費」は、本事業の支援の対象とならない旨、事務処理要領VIII⑤-6項において記載されています。)